「未来予想図」~経営者コラム~
So what 2016 ~2035年 日本で販売される新車の8割以上はエコカーに~
気になる数字をとりあえずいじる。
So What?(だからなんだ?)といわれてもいい。
とりあえずいじる。ということで、書いております、So What 2016コラム。
今日の数字は
84.3% です。
2035年に販売される新車の84.3%は、「エコカー」になる、という予想(富士経済)です。以下のグラフは、日本の新車販売市場においてエコカーの割合がどのように変化していくかの予想を表しています。(以下の分析は、この予想結果について、弊社も基本的にサポートしている(だいたい当たると思っている)という前提に立っています。)
この数字は世界の他の地域と比較しても群を抜いた数字です。同様の数値を他地域で見てみると、
北米:27.7%
欧州:22.6%
中国:8.4%
アセアン・アジア他地域:5.7%
日本における84%という数字がいかに突出しているかが良く分かります。この要因は、グラフを見れば一目瞭然です。日本におけるハイブリッドの普及が他地域に比べて顕著なためです。これは、トヨタのプリウスやホンダのフィットに代表される、日系OEMのハイブリッド技術が外資系OEMを圧倒していることが背景にあります。
1997年に発売されたトヨタのハイブリッド技術は、世界の自動車産業の競争関係に大きな影響を与えました。米国や欧州の企業が最も好む、「デファクトスタンダードやプラットフォームを握って圧倒的な超過利潤を獲得する」戦略を地で行くのがトヨタのハイブリッド戦略です。
これは、逆に言えば、他人が作ったデファクトスタンダードやプラットフォームに乗っかることが死ぬほど嫌いな欧米OEMを大いに刺激し、対応策としてのクリーンディーゼル戦略やPHEV戦略(プラグインハイブリッド)戦略を推進させるきっかけとなりました。
しかし、結果としては、クリーンディーゼル戦略は思うような環境性能を実現できずに排ガス不正問題を露呈させ、プラグインハイブリッドは充電設備の不足や、内燃エンジンを搭載する必要があることから軽量化にも限界があり、デファクトスタンダードには現時点ではほど遠い状況です。それだけトヨタのハイブリッドが特別抜きんでているといってよいでしょう。
今、特に欧州のOEMは次世代自動車の中核としてEVを据えなおし、バッテリー性能の向上と、内燃エンジンを搭載しないで済むことによる大幅な軽量化の実現で、EVの航続距離を飛躍的に伸ばすことに巨額の予算を投じています。こうした投資の成果が一気に出てくるのが、2020年以降と言われています。こうした中、日本でも今後ハイブリッドだけではなく、EVの研究開発も急速に進むことになるでしょう。
見るとすぐわかりますが、上記のグラフにはもうひとつ他地域にない特徴があります。それは世界の主要地域で、唯一日本だけが、顕著な販売台数の減少に直面するということです。縮小する国内市場と、急速に普及するエコカー。そして、海外市場におけるトヨタをはじめとする日系OEM包囲網。今後はさらに米国トランプ政権による日本の自動車産業(特に輸出)への圧力も再度強まるかも知れません。
2020年以降、電気自動車が走る姿を当たり前に見かけるようになる中で、日本の自動車OEMと優秀な日本のサプライヤーが、引き続き現在のプレゼンスを保てる保証はありません。国内雇用者数の実に1割を占め、貿易黒字の5割を稼ぎ出す自動車産業は、まさに日本産業の王様です。エコカーをめぐるメガコンペティションに、日本のOEMが勝ち抜くことを祈ってやみません。そしてその勝負の帰趨は、今後5年で決まると思われます。