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Homeコラム Column「未来予想図」~経営者コラム~トヨタEV参入の衝撃~100年に一度の自動車産業構造転換の号砲~

トヨタEV参入の衝撃~100年に一度の自動車産業構造転換の号砲~

トヨタ自動車が2020年の本格市場投入を目指して、EV事業に参入することが発表されました。大統領選のニュースにかき消されてしまった感じのこのニュースですが、これは、自動車産業全体、ひいては日本経済の産業構造にも今後影響を与えかねない大きなイベントといえます。

 

トヨタ自動車は、これまでいわゆる次世代自動車(HV,HEV,PHEV,燃料電池、EV他)のカテゴリーの中で、1997年に市場投入されたプリウスに代表されるハイブリッド車(HV/HEV)の領域で他社を圧倒しつづけてきました。

 

ドイツメーカーがPHEVやクリーンディーゼルを強化し、中国系メーカーがEVに注力してきたのも、トヨタのハイブリッド車の完成度が高すぎて、追随しても絶対に勝てないことが明白だったためとも言えます。

 

一方でトヨタは、EVについては、電池性能の限界と充電インフラの不足から、EVの早期普及は難しいとの判断で、EV開発への経営資源の投入には消極的でした。

 

確かに過去を振り返ると、EV事業領域では、いくつもの「壮大な失敗事例」が存在します。特に印象的だったのは、EVの航続距離の短さと長い充電時間等を、クイックドロップ方式(バッテリーをスタンドで交換できる方式)で解決しようと試みた、イスラエルのメガベンチャー「ベタープレイス」の倒産でしょう。

 

5,000億円以上を世界中の投資家(有名VC含む)から調達したものの、事業は失敗し、2013年に清算されています。このような、EV新興勢力の相次ぐ討ち死にもあり、自動車業界では、「少なくとも2040年以降まで、EVが次世代自動車の主流になることはない。」というのがコンセンサスとなってきたように感じます。

 

しかし、EV普及の最大の原因とされる、1充電あたりの航続距離の長さは、特に日本の電池メーカーが主導する技術革新競争により、予想を上回って急速に伸びてきました。

 

さらに、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題もあり、内燃機関を併用する環境車の環境性能には限界があるという認識も高まり、ついにドイツでは2030年までに内燃エンジン車(ガソリン車)の新車販売禁止を求める決議が採択されました。

 

こうした流れの中で、フォルクスワーゲンは、2016年6月に発表した中計において、2025年までにEV販売を最大300万台、グループ販売全体の最大25%という大幅なEVシフトを発表します。これは現行3万台程度の販売を、今後10年で100倍にするという非常に極端な計画です。

これは、排ガス不正問題で失った信頼とブランドの回復という、フォルクスワーゲンの生き残りをかけた姿勢の表れでもありますが、ワーゲンは、世界最大となった中国の自動車市場で高いシェアを持つため、あながち実現不可能ではないかも知れません。

 

では、他社が既に一歩先んじでEVに経営資源を投じている中、トヨタのEV参入は、他社と比較して遅きに失したのか。これは必ずしもそうとは言えないと思われます。EVは、構造がシンプルで、部品点数も少なく、ベンチャー企業でも既存の技術を統合していけば生産可能といわれます。逆に言えば、複雑な内燃車で世界のトップを走り続けるトヨタにとって、少なくとも技術的には十分キャッチアップ可能な領域です。

 

充電池の能力についても、世界最大の自動車製造会社であるトヨタと、電池会社が取引を望まないわけがなく、独自技術とアライアンスで、短期間でトップクラスに躍り出るでしょう。トヨタには十分勝機があり、逆にEVで先行する各メーカーの方が、トヨタ参入に戦々恐々としているはずです。

 

そして実は、トヨタのEV参入宣言には、本質的に自動車産業の構造を揺るがす大きなメッセージがあります。それは、戦後の日本経済のエンジンとなってきた、部品メーカーの系列構造に代表される自動車産業そのものの構造転換です。

 

自動車はおよそ3万点の部品から成り立っています。このうち、内燃型エンジン(ガソリン、ディーゼル等)の部品点数は約8,000点あり、全体の3割近くにもなります。EVが普及するということは、これらエンジン部品のサプライヤーは主業を失う可能性があるということになります。トヨタのEV宣言は、特にエンジン部品を製造するサプライヤーに対する、自立を促すメッセージとも言えます。

 

一方で、当然電気モーター部品のメーカー等にとっては、広大な新規マーケットが開かれることになるでしょう。自動車に関するイノベーションとしては、自動運転が大きく注目されていますが、EVシフトは日本の自動車産業に、よりダイレクトな影響を与えるといえます。


富士経済の予想では、2035年時点で、世界の自動車販売における環境対応車の比率は12%程度。破壊的な構造転換までは予測されていません。しかし、トヨタのEV参入を契機として、今後さらにこのスピードが加速する可能性は高いと考えられます。


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