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Homeコラム Column「未来予想図」~経営者コラム~アベノミクスの経済的帰結

アベノミクスの経済的帰結

 

 

2013年初頭から、ニュースをにぎわせている経済テーマは、何と言ってもアベノミクスです。2013年以降のビジネス環境に直結する、国運をかけた前代未聞の壮大な経済実験の帰結について、コラムでも少し突っ込んだ予測をしてみたいと思います。

予測:
2013年末のドル円相場は110円を予測。しかし、2014年以降景気は後退し、スタグフレーション(景気後退下の物価上昇)がおきる。

予測の根拠は次のとおりです。

①米国による円高修正の容認。

②欧州各国の輸出批判に対抗できるだけの外交力発揮。

③消費者物価指数の2%上昇は需要の拡大ではなく、輸入コストの増大によって実現する。

④結果としてスタグフレーションが発生する。

アベノミクスは国の命運をかけた壮大な挑戦であり、私は大賛成です。しかし、政策としてのアベノミクスがよりよいものになるにはいくつかの条件があるのではないかと考えます。

 

 

まず、そもそもアベノミクスは継続可能性があるのかないのか(一過性の政策ではない)、という点については、明確に「継続性あり」だと思います。 

 

1970年以降の日本の経済史は、常に米国との関係の中で決まってきたというのが私の勝手な見解です。米国は、これまでの日本に対する統治方針を「生かさず殺さず管理する」というスタンスを、「対中防共堤として積極的な役割を担わせる」という方針に転換してきていることがかなり明確になってきています。

そして、そのためには日本の経済力が一定程度の国力を保ち続けることが必須となります。したがって、今回米国が円高の修正に反対することはない。したがって日銀人事も、7月の参議院選挙も、アベノミクスにとっていい方向にしか行かない、これはほぼ間違いないと思われます。

さらに、米国の経済は回復基調にあり、長期金利も上昇しつつあるため、基本的には米国の金利は日本を少し上回る形で日米金利差が生じるトレンドが生じ、円安傾向をサポートするのではないかと思います。

 

 

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②円高修正に対する他国の批判としては、自動車産業などで深刻に競合しているドイツ等の反対がすでに顕在化していますが、日本は米国以外の諸外国に対する外交力は十分にあり、これらが外圧となってアベノミクスを阻害することにはならないと考えます。(唯一の懸念となりうる中国は、現時点ではそもそも為替を完全に故意に管理しており、為替政策に関する批判できる立場にない)。こう考えると、アベノミクスによって不利益をこうむりうる諸外国からの外圧は、今回基本的に深刻にはならないと思います。

③インフレ目標の採用数値である消費者物価指数CPIは「全国の世帯が購入する家計に係る財及びサービスの価格等を総合した物価であり、ここから生鮮食品を除いたもの」ですら、いわばざっくり、家計が消費する生鮮食品以外の財の価格ということになります。金融緩和は、より直接的に株式や不動産の価格を上昇させますが、この効果は直接CPIの上昇につながるわけではありません。

したがって、金融緩和効果がCPIの上昇を生じさせるためには、いくつかのルートを経る必要があります。具体的には円安による輸出型企業の業績拡大に伴う業績の改善を原資とする、雇用の増大や賃金の増加、または株式・不動産の価格上昇が消費を誘発する「資産効果」です。今回の金融緩和は、この2つのいずれももたらさないのではないか、というのが私の仮説です。

まず、円安による輸出企業の業績改善が自然に雇用の増大や賃金の上昇につながることはないと考えます。現代の企業は「利益を最大化することが最大の使命」と考えており、得られた利益は株主還元か負債の返済に優先的に利用されます。本来は設備投資に回すべきですが、現在日本企業は萎縮モードであり、投資のマインドはとても弱い状態です。つまり、売上が上がったからといって、それが雇用の増大や賃金の上昇を自然にもたらすメカニズムは現在の日本企業の運営メカニズムにはビルトインされていない。(いいとか悪いとか、社会主義賛成とかいうわけではなく、あくまで事実として。)

次に、バブルを発生させることにもなった資産効果(株式や不動産などの資産価格の増大が消費を増大させる)はおきるのか、という点ですが、これも私は否定的です。日本の家計部門は、1500兆円の貯蓄超過といわれていますが、そのほとんどは高齢者が保有しており、老後のたくわえを株式に投資し、その含み益で過剰に消費を拡大するというような行動はまず起きないと考えます。

 

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 一方で生産年齢にある家計(子育て世代)では、もっとも支出が必要にもかかわらず賃金があがらず貯蓄もできない、という状況にあり、この世代が株式や不動産に投資をして、さらに消費を拡大させる、という行動はとらないと考えます。(原資がない)。

賃金もあがらず、資産効果も得られないなかで、消費者物価が2%上昇するのは、輸入財価格が上がって、コストプッシュ型のインフレが起きる場合です。

 

この場合、名目物価の上昇率より名目賃金の上昇率が低い状況になり、家計は実質所得の目減りとなります。これがもし本当に顕在化すると、消費はマイナスになる可能性すらあると思います。

 

さらに名目賃金の上昇率は名目金利の上昇率を下回る可能性があり、このような場合には、家計はより深刻な状況になると考えます。このようなコストプッシュ型のインフレが起きるのは、円ドルが少なくともリーマンショック前以下の水準になることが必要と思いますので、そう考えると一ドル=110円前後ではないか、というのが予想の根拠です。

 

 

 

そして、このような事態になったときにおきるのは、いわゆるスタグフレーション(物価上昇下での景気後退)です。これがアベノミクスがもたらす2013年末から2014年に向けた、ひとつの帰結の可能性と考えます。

これを防ぐには、利益の一定率を優先的に賃金や新規雇用に当てるような制度、そうした利益分配方針に対する税制の優遇などがどうしても必要と考えます。社会主義的といわれるかも知れませんが、こうした利益の従業員分配を制度化して、中間所得層を拡大させている国はたくさんあります。経済全体の需要を増やすには、こうした施策が必要と思います。

もちろん、なにより大事なのは、安部総理がいう三本の矢の3つ目である、「成長戦略」であることは間違いないのですが、これは言ってみれば「だれも反対できない水戸黄門の紋所」みたいなものであり、正論だけど誰かが音頭を取ったら実現できる類のものではなく、決して一朝一夕にはいかない。それこそみんなが汗水たらしてがんばるしかない。

そう考えると、政策として人為的に実現し得ることとして重要なのは、円安による利益の増大や資産価格の上昇をいかに健全に消費拡大につなげるかであり、そのためには利益の従業員分配や賃金の上昇がどうしても必要、と考えます。まあつまるところ、名目賃金率の上昇が起きない限り、長期的にはスタグフレーションに陥る、というのが私の今回の未来予測です。

もちろん、こんな不幸なことがおきることのないよう、日本企業の行動原則が少しずつ変わることを願います。