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「未来予想図」~経営者コラム~

~働き方改革コラム~定時出勤は必要ないといわれたとき、あなたならどうしますか?~

作成日:2017年09月12日(火)

27歳のときに、旧アーサーアンダーセンのM&AチームがKPMGに移って設立された、GMDコーポレートファイナンスという会社に移籍し、M&Aアドバイザーの門をたたきました。その時に、ささやかながら新人歓迎会を開いていただいたときのことを今でもたまに思い出します。

 

 

宴もたけなわ、これで解散というときに、チームのボスが私に言いました。

 

 

「いいか西澤。我々はサラリーマンではない。プロフェッショナルだ。プロフェッショナルというのは時間で拘束されて働くのではない。成果にコミットするのだ。従って、朝何時に出社しないといけないとか、そういうくだらないルールはないのだ。すべてプロジェクトベースだ。だからいちいち定時に会社に来る必要はないのだぞ。」(うろ覚えですが、だいたいこんな感じのことを言われたはず・・・)



当時はまだ無垢で紅顔の美青年だった私はこれを完全に信じ込み、さらにいたく感動します。「そうか。僕も今日からプロフェッショナルの仲間入りだ!決まった時間に意味もなく会社に行かなくてもよいなんて、なんて素晴らしい社風なのだ!。」


調子にのった私は、次のお店でそのまま友人と朝まで飲み明かして爆睡したあげく、さっぱりとした顔(たぶん)で悠々と11時過ぎに出社します。しかし、そこで繰り広げられていたのは阿鼻叫喚の世界でした。。。


「にに、西澤くん、いったいどうしちゃったのよ!!いま何時だと思ってんの!!???。」
⇒朝から私を探して飛び回ってくれた秘書さん。

「おいこら西澤!冗談を真に受けてどうする(笑)!!」
⇒ 言った張本人のボス。

「ほんとに遅れてくるやつ初めて見たぞ。そういうのを重役出勤っていうんだよ。お前ある意味面白いわ。」
⇒マネジャー。


そう。私は忖度すべきシチュエーションを読めなかったのです。。。




時は移り、今から9年前。IBCS(現IBM)の戦略チームに移籍して、研修も終わったころ。またしても当時の新ボスから今度はメールで連絡が来ます。(これもうろ覚えですが、おおよそ以下の感じ)


「まだ、入るプロジェクトが決まってないので適当にやっててください。うちの会社、とくに出勤とか朝の集合とかないから。席もフリーアドレスだから。」



このとき即座に、私の脳裏でKPMGでの苦い経験がよみがえります。「あ、これ、騙されちゃいかんやつやで!忖度せないかんやつやで!!!」

ピンときた私は、必死で慣れないイントラネットを探り、どうも我々のチームは箱崎本社のXX階が拠点だと突き止めます。


そして翌日、意気揚々と8時に箱崎に到着した私は、一直線に目的の階に上がり、チームの席を探しました。あれ、変だな。なんか、空の机だけいっぱい並んでいるぞ。でも、ところどころ、集団で固まって座っているところもあるな。どうも、あの辺がチームの拠点かな?


勝手にめどをつけた私は、5人くらいの集団の横にちょこんと、ちょっとかわいげを醸し出しつつ鎮座しました。しかし、周囲の目線の冷たいこと冷たいこと。


「お前、だれだ!?」的なするどい視線がぐさぐさと突き刺さります。その集団の会話の端々に、サーバーとか、リナックスなどの単語が混じっているのが聞こえてくるに至って、「どうも、ここじゃねえな」ということにようやく気が付いた私は、再びイントラネットをまさぐり返して、本当は丸の内のほうががメインの拠点であることを探り当てます。


やべえやべえと焦りまくった私は、電車じゃまにあわんわー、とタクシーに飛び乗り、大急ぎで移動して今度は丸の内の事業所エレベーターに駆け込みます。しかし、やはりここにも席はなく、ぽつりぽつりと集団が点在するのみ。しかも、朝9時前(世間的な定時出勤時間)だというのに非常に人影もまばら。とりあえずその辺に座った私は、漫然と下界の絶景を眺め、ただただぼーと過ごしたのでありました。


後日、メールに書いてあったことはすべて事実であったことが判明します。決められた出勤時間などもなく、自分の席などもなく、あるのはただPCと携帯のみ。さすが合理化を徹底した外資系企業だと妙に感心したものでした。


あれからはや10年。世間でもようやくフリーアドレスとか、働き方改革に伴う在宅勤務とか、時短とか、その弊害とか、いろいろと話題になってきているようです。しかし、そういう制度のもとで何年も働いた私に言わせれば、弊害など屁の程度しかないと実感を持っていうことができます。


特に、午前中の頭もすっきりしていて最も生産性が高い時間を、満員電車で疲弊させるというのは、日本経済のためにもどうにかしたほうが良いのではないかと思ってしまいます。(製造業とかはちょっと別かもしれませんが。)若くて死ぬほど働く体力と気力があるうちは、会社の近くに住むのもよいでしょうし、ある程度シニアになったら、テレワークを効果的に使う方法など、今は工夫次第で代替手段はいくらでもあります。


こうした働き方改革の流れは、今後雇用形態の柔軟化や副業兼業のトレンド、フリーランスなどの独立プロフェッショナルの増大や、さらに一歩すすんだ起業家の増大、多様化にも大きな潮流となってつながっていくことでしょう。


弊社は、そんな働き方改革を推進する国内最大のプラットフォーマーを目指す、株式会社みらいワークスをささやかながら応援しております。フリーランスをはじめとする独立プロフェッショナルとの協業、連携をお考えの方は、ぜひみらいワークス社までお気軽にお問合せください。


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独立や起業に関する「日本民族限界論」について~日本人がリスクが嫌いなのは事実だが、だからといって独立や起業が増えないとは限らない~

作成日:2017年05月29日(月)

ほんとうに起業や独立は日本で増えるのか

 

起業して会社を立上げ、4年ほどやってみると、「どうしてこんなに楽しいのにみんなやらないのだろうか。」などとえらそうなことを考えることもあれば、「うひゃー、なんだか、とっても、ひりひりするぜい~w」ってなときもあり、なんだか色々と経験した感じがします。今回は、こうしたつたない経験も踏まえつつ、「日本で起業や独立がもっと大きな潮流になる条件はなにか」ということについて、コラムに書いてみたいと思います。

 

 

日本人=リスク嫌い論について(通称:民族限界論)

 

 

独立や起業について、昔からずっと言われることのひとつが「日本人はリスク(不確実性)が嫌い」というものです。例えば、日本人は農耕民族でリスクが嫌いだから、起業や独立は、DNAとして向いてないといった考え方です。これは本当でしょうか。


※ちなみに、一般には、リスク=危険・危ないこと、と解釈されますが、少なくともビジネスの世界では「リスクとは不確実性(ボラティリティ)のことを指します。本コラムでも、リスクとは、ボラティリティのことを表しています。


多くの日本人は投資家タイプでいうと「リスク回避型」

 

証券分析論の入門レベルの考え方に、リスク選好というものがあります。リスク選好度の高い投資家は、期待リターンが同じなら、リスクが高いほど、換言すれば実現するリターンの振れ幅が大きい投資機会ほど、魅力的と考える人たちです。こうしたリスク愛好型の投資家は、たとえ平均的には損することが分かっていても、一獲千金の可能性が少しでもあれば、喜んで投資します。

これに対して、リスク選好度の低い投資家(リスク回避型)は期待リターンが同じならリスクが低い方を、またリスクが同じならより高い期待リターンを選びます。

 

これを鑑みて、自身を振り返ると、私は基本的にリスク選好型かなと思います。独立したり起業したりしてはるか先をいく諸先輩も、話を見聞きする限りやっぱり、多かれ少なかれ、リスク選好型だなと感じます。

 

 

一方で、(かつての自分も含め)サラリーマンの人たちをはじめとする日本の多くの人たちは、圧倒的にリスク回避型だというのも実感です。賛否両論あるとは思いますが、日本人はリスクが嫌いだから、不確実性が高い独立・起業は日本で大きなトレンドになりにくい、という指摘は、個人的には、正直やっぱり正しいと感じざるを得ません。



 

では「民族限界論=起業・独立は日本人にはDNAとして向いていない説」は正しいか。

 

 

 

では、このような、「日本人はリスクが嫌いだ」ということを前提とした場合、日本で独立や起業が永遠に大きなトレンドになることはないのかというと、これもまたそうとは言い切れないでしょう。理由は簡単です。日本人の多くがリスク回避型で、これが変わらないとしても、逆にもし、独立や起業のリスクが、雇用され続ける(被雇用者であり続ける)ことのリスクより低くなれば、独立や起業が主流になることが理論的にあり得るからです。(リスク回避型投資家の行動選択)

 

 

では、雇用されることのリスクと、独立したり、起業したりすることのリスクが逆転することは将来あり得るのか。多くの人は、「そんなことあるわけないじゃん」と考えると思います。しかし、ここ数年とかのレベルではなく、超長期(20~30年単位)で考えたとき、そんな逆転が絶対に起きないとも言えないのではないか、というのが弊社の仮説です。この考え方の背景は以下の通りです。

 

人口動態と伝統的組織構造の決して埋まらないギャップ

 

 

いうまでもなく、日本の人口動態は、完全に逆ピラミッドです。一方で、伝統的組織の構造は、完全にピラミッド型です。この2つは、もはや変化することのない「永遠の規定路線(止められないトレンド)」です。順番に確認します。

 

 

人口動態の逆ピラミッド型はもう(根本的には)変わらない

 



人口動態の逆ピラミッド構造が、今後数十年以内に完全に是正される可能性はあるでしょうか。これはやはりNOだと思います。出生率の向上等の政策により、この逆ピラミッド構造を是正していくことはもちろん非常に重要ですが、それにより短期的に形状変化することができないのが人口動態です。

 

 

既存組織のピラミッド組織構造も変えられない

 


既存の大組織は、すべての行動原則において、組織のピラミッド構造が大前提となっています。現在の経済の中心にある大企業ほど、この構造を維持しなければ組織を継続できません。これもまた、恐らく絶対に変化することのない「永遠の規定路線(止められないトレンド)」です。これは職業がらいろいろなステージのいろいろな企業とかかわった経験からくる実感です。


 

弊社は、この2つの、「絶対的な事実」から生まれるギャップが、日本における多くの「構造的な問題」の根源にあると考えています。そしてこの構造は、被雇用者のリスクを中長期的に高めていく可能性が高いと考えます。

 

※ちなみにここでいう被雇用者のリスクとは、賃金の伸びなやみや、リストラなど、生活に直結する経済的なリスクだけではなく、やりがいや生きがい、働く喜び、出世による承認欲求の充足といった要素も、リターン・リスクの構成要素として捉えます。

 

以上を簡単に概念図で表してみると、以下の通りです。

 



逆ピラミッド



 

 

仮説1:伝統的組織の被雇用者のリスクは上がり続けるのではないか

 



このような根本的な構造ギャップにより今後、「非雇用者のリスクは上がり続ける」という仮説を立てると、時間軸とリスクのマトリクスで次のような右上がりの曲線が描けます。これを仮に「被雇用者リスク曲線」と呼びます。

 


雇用リスク上昇

 


 

 

 

仮説2:独立・起業のリスクは下がり続けるのではないか

 

 

次に、独立や起業のリスクについて考えてみたいと思います。これに関しては、特に技術的な要因により、中長期的にはリスクが下がっていく可能性が高いと考えます。「独立・起業リスク曲線」は中長期では右下がりになる、というのが2つ目の仮説です。

 

 


独立リスク減少


 

 

 

もし、この2つの仮説が仮に正しいとすれば、この2つのグラフの交点で、「被雇用者のリスク」と「独立・起業のリスク」の逆転がおき、日本でも(遠い)将来、独立や起業がもっと大きなトレンドになる可能性があるのではないか、これが本コラムの主題です。

 


逆転ポイントの基本説明

 


 



「雇われるより独立したほうがリスクが少ないから(自己防衛になる)から。」という考え方で独立するなんて、なんとまあ、ださいというか、シリコンバレー的な考え方からすれば、邪道も邪道、あり得ない、という話です。しかし、日本人の基本的性質が、リスク回避型であるならば、こうした条件がそろったときに、リスク回避型の思考で独立したり起業したりする人が今後増えても、論理的にはおかしくないかも知れません。

 

アベノミクスによる景気回復の影響


では、このように伝統的大組織における被雇用者のリスクと、独立や企業のリスクが逆転する点を「Xポイント」とした場合、人為的にそのようなXポイントの到来を早めることは可能か(起業や独立がメインストリームになるような日の到来を、人為的に早めることが可能か)ということを考えてみたいと思います。


例えば、アベノミクスは、このXポイントについて、どう影響したでしょうか。


弊社の理解では、アベノミクスによる景気の回復は、起業・独立する人と被雇用者、双方のリスクを減らす作用がありました。(まあ、景気が回復すれば全体的にリスクが低くなるのは当たり前ですね)それを表すと以下のような図になります。

 




アベノミクス効果1


 

さらに、この二つの図を重ねて、Xポイントの動きを確認すると、結果的にXポイントはほとんど動いていないといえそうです。これをグラフで表すと以下のような図になります。要は、今後独立や起業が増やせるのか、減るのか、いう命題に対して、アベノミクスは今のところ中立、というのが現在の弊社の理解です。

 


 

 

アベノミクス効果2


 

 

つまり、独立したり起業したりした人は、それなりに景気回復の恩恵を受けている一方で、被雇用者の人たちも、名目賃金の緩やかな上昇の恩恵を得ることができつつあります。また、会社がキャッシュポジションを改善し続けることで、将来のリストラリスクや、退職金がもらえなくなるリスクがある程度軽減していると考えられます。その結果、起業家も被雇用者も、みんながそこそこ悪くはない、という状況にあるのが、2017年現在の姿ではないかと思います。

 

 

次の景気後退期になにが起きるか



では、最後に、いつかは分かりませんが、いつかは必ず来る次の景気後退。この景気後退は、このXポイントにどのような影響をもたらすでしょうか。当たり前ですが、不況が起きれば、被雇用者のリスクも、独立・起業のリスクも、ともに上昇します。



現在、大手企業は将来の不確実性に備えてキャッシュポジションを大幅に積上げているため、次の不況に対して一定の耐性があります。これに対し、独立・起業している多くの人やベンチャー企業のキャッシュポジションは、やはり相対的に脆弱であると推察されます。





従って、景気後退が起きたときのリスクの上昇幅は、やはり被雇用者より、独立・起業側の方がより大きくなると思われます。不況になると中小企業はしんどい。これも当たり前ですね。結論として、このまま次の不況期が到来すれば、Xポイントの到来時期はさらに将来にずれ込むことになります。

 

ベンチャーブーム・独立ブームの盛り上がりと退潮は、少なくとも過去においては、基本的には常に景気循環と完全に連動しています。今、足元で盛り上がりを見せるベンチャーブームやフリーランスブーム、独立ブームも、次に再び大きな不況が来れば、このままならあっさりと退潮していくでしょう。

 

 

では、どうすべきか。景気が落ち着いている今のうちに、さらなるセーフティネットの充実が急務

 

 


では、どうすべきか。やはり、起業や独立を支える様々な制度やセーフティーネットは重要だと思われます。現在、フリーランス向けの保険商品の開発、リモートワークを支援するシステムの普及など、起業や独立のリスクやコストを低減させるサービスやソリューションはどんどん新しい優れたものがでてきていますが、こうした流れを制度としてももっと普及させることは必要ですし、需要があるので関連市場もさらに成長すると思われます。

 



みらいワークスのハイスペック人材クラウドソーシングビジネス

 

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ドナルド・トランプ大統領の時代~天才的なディール手腕により、世界経済の地政学リスクは相対的に低下し、オールドエコノミーを中心に経済も安定する。しかしイノベーションは進まない~

作成日:2017年01月20日(金)

まもなく、ドナルド・トランプ大統領が誕生しようとしています。2017年最初のコラムでは、ドナルド・トランプの時代がもたらす未来について予測して見たいと思います。

 

どうやって予測するのか

 

まず、そもそも論として、アメリカに特別詳しいわけでもなく、ましてやトランプ氏のことなど知りもしなかった人間(=すなわち筆者)が、ドナルド・トランプがもたらす未来ついて予想することなど可能か、という問題があります。

これについて私は、「特定の領域についてはある程度可能」だと考えています。ここでいう特定の領域とは、「経済」の領域です。トランプ氏の宗教観、人種や男女平等に対する思想信条、考えについて、極東アジアの島国に住む人間が正確に理解し、予測することは当然不可能です。(だから、この分析は、彼の人種観とか、思想信条を分析したりその可否を検討するものではありません)

 

しかし、事業家としての氏の足跡を丹念に追っていけば、その経営スタイルの特徴(くせ)や、必勝のパターン、陥りやすいミス、弱点などを理解することは可能であり、それは今後トランプ氏の政権運営でも今後必ず発現すると考えます。本気であればあるほど、経営者の本質というのは隠しようがなく表れてしまうものだというのが私の理解です。

 

もうひとつ、私がトランプ氏を理解するのに役立つ軸になると思ったのは、彼が手がけてきたビジネスが不動産であるという点です。私は不動産の専門家ではありませんが、駆け出し社会人のころ不動産ファンドの運営会社で不動産投資ビジネスの修行(下働き)をした経験があります。また、その後は小さい案件ではありますが、M&Aの仕事にずっとかかわってきて、いわゆる「ディールの世界」で生きている「ディールジャンキー」というカテゴリーの人たちの価値観や思考パターン、ビジネス上の特徴やくせについては、かなり正確に理解しているつもりです。

 

このコラムでは、「ディールジャンキー」であるトランプ氏が不動産ビジネスで残してきた足跡から、彼が大統領という、いわばアメリカという会社のCEOに就任した場合、どういう事業領域でそのディールの能力を発揮し、または発揮できないか、という分析をすることで、トランプがもたらす世界に関するヒントを探ってみたいと考えます。



■では、不動産ビジネスとはそもそもどんなビジネスなのか


不動産ビジネスは、「立地」「企画」「管理」すべてがそろわなければ成功しない。これは、私が駆け出しのころ、不動産業界何十年といった業界の裏ボスみたいな人から口を酸っぱくして教えて頂いた「基本中の基本」です。

「立地」
これはいうまでもなく、不動産の場所、です。丸の内の一等地と信州の山の中では、土地が持つ意味が全く違うのは当たり前です。

「企画」
その土地にどのような建物を建てるか、という話。銀座の一等地にケーヨーホームセンターを建てるバカはいない。これも当たり前です

「管理」
不動産の価値を維持し高めていくためには、「庭の芝刈り」から「窓ふき」などといった「プロパティーマネジメント」から、「家賃の収納管理」「滞納督促」なども含め、地味な「管理」業務が欠かせません。これも不動産事業の価値を左右する重要な要素です。

 

何を当たり前のことを、と失笑を買いそうですが、この「当たり前」がやっぱり難しい(笑)。

 

 

銀座の一等地、丸の内の一等地、大手町の一等地、ならわかりやすい。しかし、これが、「豊洲新市場駅前の6万㎡の土地」、とか「蒲田駅前徒歩6分の、80坪の土地に立つ築30年のペンシルビル」となるとどうでしょうか。すぐに適切な、「立地」、「企画」、「管理」のプランが出てくる人がいたら、それは相当な不動産のエキスパートでしょう。

 

豊洲を例に挙げてみれば、2000年前半、湾岸エリアは結構な言われようでした。あんな海沿いにぱかぱかマンション立ててどうするの?といった感じです。しかし、現在日本で一番値上がり率の高いマンションは豊洲にあります。さらに東京オリンピックも控え、湾岸のポテンシャルはさらに上がる一方とみる人もいます。

 

その一方で逆に、地震リスクや土壌汚染リスクをことさら指摘する人も当然多くいます。その土地がどのような立地で、どのようなポテンシャルがあり、どんな企画、管理が最適なのか、判断はそんなに簡単ではないのです。ましてや不動産ビジネスは、規模が大きく、リードタイムも数十年という長期ビジネスです。失敗は即死につながりかねません。他のビジネスと同様、不動産ビジネスも、奥が深く難しい。

 

このような不動産ビジネス界では、他のすべてのビジネスと同様、業務の細分化が図られます。立地に関する仕事(土地の仕入れ、仲介)、企画に関する仕事(デザイン、建築、施工)、管理に関する仕事(アセットマネジメント、ファイナンス)といった分担です。

 

 

■トランプ氏は、不動産ビジネスのどの領域が得意なのか

 


不動産ビジネスの基本を確認した上で本題です。トランプ氏は、「立地」「企画」「管理」のどの領域が得意なビジネスマンだったのか。当初私は、彼は生粋の「ディールジャンキー(取引中毒者)」で、「良い土地を安く仕入れて、手間をかけずにさやを抜いて高く売る」ことに最大の喜びとやりがいを感じるタイプだと勝手に思い込んでいました。


創造力とか、多くの人を巻き込んでビジョンを実現していく巻き込み力が必要な「企画」や、地味でこつこつやる必要のある「管理」業務などにはおそらく興味がないし、苦手なのだろうな、という印象です。


ところが彼の自伝や評伝、そしてなにより客観的な実績を読み説くと、これが全く間違っていることに気づかされます。トランプ氏は、立地(仕入れ)、企画、管理のすべての領域でずば抜けた天才ぶりをいかんなく発揮し、数々の伝説的なディールを成し遂げているのです。決して、単なるディールジャンキーではないのです。

 

 

■トランプ氏のすべてがぎゅっとつまった「トランプタワー」

 

 

最も特徴的なのは、やはりトランプタワーでしょう。ざっくりその歴史をまとめるとおおよそ以下の通りです。

大学卒業後に父親の不動産会社の手伝いをしていたトランプ氏は、このまま父親の事業を忠実に引き継いで、中流一般家庭向けの安価な集合住宅を作り続ける人生はいやだ、自分の事業を確立して自分の足で立ちたいと考えます。


そこで、マンハッタンに小さな安アパートを借りて単身移り住み、そこを拠点に毎日ニューヨークの街を歩き倒します。これは、日本でいえば、練馬あたりのアパート経営でそこそこ成功を収めていた地場の中堅不動産会社の2代目が、「俺は練馬じゃ飽き足らん! 今に麻布に最高の億ションタワーを建てたる!」と意気込んで、麻布十番あたりの古いワンルームに住み、街をくまなく歩き回る、という感じでしょうか。トランプ氏25歳のときです。

 

トランプ氏は、そこで、5番街の一等地に立っていた11階建の建物に目をつけ、「ここに世界一の集合住宅と商業施設の複合アパートを建てたら絶対に最高のものになる!」と思い立ちます。

 

 

それから彼は、既存建物のオーナーに、何十通もの手紙を書き、土地の購入を打診し続けます。しかしその手紙に反応があったことはただの一度もありませんでした。しかし彼はそれをこつこつと続けます。

 

その手紙が、3年後にひょんなことから売却のきっかけにつながり、1983年に、37歳の若さで遂にマンハッタンの最高の立地に、63階建のトランプタワーを完成させることに成功しました。繰り返します、37歳です。

 

 

その過程では、容積率を極限まで拡大するために、隣のティファニーの空中権を買い取る交渉をしたり、建築計画を認めさせるために行政と粘り強く交渉したり、トランプタワーのエントランスの階段の手すりは、月2回磨く、といった微細までこだわった管理の指導をしたりと、とにかく全身全霊といった様子でトランプタワーに打ち込みます。

 

 

このように、立地(仕入れ)、企画、管理といった、性質の異なる業務領域のすべてでずば抜けて高い能力を示す経営者やリーダーは、私の先輩にもいました。(スケールはもちろんトランプ氏が桁違いですが)。 

 

 

■トランプ氏の強さ

 



そうした人たちの特徴をヒントにしながら、トランプ氏の能力・性質の中で得に、強さはなにか(かなり強引ですが)演繹的に導くとすると、およそ以下のような点になると私は考えます。

 

<極めて学習能力が高い>


トランプタワー建設のようなプロジェクトを成し遂げるには、不動産だけでなく、法律、ファイナンス、デザイン、行政法などなど、極めて多岐にわたる知識が必要で、これを20代の若さで、走りながら考えて理解し、さらに駆使することは、極めて明晰な頭脳と学習能力(平たく言うと勉強を厭わない姿勢)がなければできません。トランプ氏は、おそらく大変勤勉な経営者だと思われます。

 

この高い学習能力は、大統領としてもいかんなく発揮されると思われます。明らかに、勉強不足に基づく勘違い発言もあり、外交や経済政策について全くの素人であることを懸念される氏ですが、側近の支援も得て、すぐに精通していくであろうことは想像に難くありません。彼が現時点で知らないことがある、という点は政権運営には本質的になんの打撃にもならないと想定します。


<本質をつかむ能力(=カン)に天才的に長けている>


当時マンハッタンは既に世界一価値の高いエリアでしたが、それでもトランプタワーのようなこれまでの概念を全く超越した新しいものを作り、それが絶対に売れると確信できるのは、物事の本質を直観的に捉えるカンが天才的に鋭いlことの証左です。

 

 

この勘の鋭さは、多岐にわたる大統領の職務を遂行するにあたり、大いに発揮されると思われます。側近や関連省庁から洪水のように情報が提供されても、それらを活用しつつも、最後は自分の信念と勘に基づいて決断する「データアーティスト」のような能力がおそらく彼は非常に高い。

 

<長期ビジョンに基づいて行動できる(場当たりの思いつきではない)>


25歳の無名の2代目経営者が、37歳にトランプタワーを完成させるまで12年。粘り強く取り組み続けることは、瞬発力だけに優れた場当たり的な経営者には決してできないことです。トランプ氏は、長期的ビジョンに基づいて大きな仕事を成し遂げることができる優れた経営者と言えます(逆に言えば、それだけ「成功」や「勝利」への執念が強いともいえます)

 

 

トランプ氏への批判軸として、その場での思いつきとか、いきあたりばったり、という指摘を良く聞きますが、恐らくそうではないと私は感じます。自分の直感に従って、「これはできる」と踏んだら、何年かかろうと必ずやり遂げるという、長期戦を戦い抜く能力(そして最後には目指す勝利を勝ち取る)も、極めて高いと想像しています。

 

<手段としてのハッタリを最大限効果的につかうことができる>

 


25歳の無名の青年実業家が、実績も資金もないまま、このような巨大プロジェクトを成功させることができたのには、やはり相当の「はったり」や、俗にいう「じじ殺し」ともいえる人たらしの能力がないとできることではありません。

 

 

こうしたハッタリは、実現しなければただの誇大妄想狂ですが、彼のように実現させてしまうと、もはやはったりとは言えません。これは、スティーブジョブスの「現実歪曲フィールド」にも似た能力、信じきることで、周りを巻き込んでその世界を実現してしまうという、天才経営者特有の能力と言えます。特に外交の世界では、このハッタリを効果的につかうことにより、相手の譲歩を引き出す、トランプ交渉術はいかんなく発揮されると思われます。(ソフトバンクの孫さんとトランプ氏がすぐに打ちとけられるのも、お互いそれが分かるからではなかろうか)

 

<勝利へのあくなき執念はあるが、「勝者総取り」のハゲタカではない>



プロジェクトが大きくなればなるほど、利害関係者は多くなり、成功の果実(=利益)をそれらの利害関係者の間で、ほどほどみんなが満足する配分で分け合う必要があります。手柄を一人で総取りしてしまう人は、人を巻き込んだ大きな仕事は絶対にできません。このことからも、彼は、ただひたすらに利己的で自分の利益を最大化するだけでなく、その成果をほどほどみんなが満足できる程度に、分配できる(分け合うことができる)経営者だと思われます。(もちろん、自分の分も人にわけあたえるような、ただの「いいひと」でないことは明白)

 

 

例えば、台湾との関係を材料に中国との貿易について有利な条件を引き出そうとしている様子がうかがえるなど、トランプ氏のハッタリ外交には薄氷を踏むような危うさもあります。しかし、最終的に、自分だけがひとり勝ちして成果を独り占めするディールが長続きしないことも直感的に理解している氏は、外交において、最終的にはどこか双方がハンドシェイクできる妥協点に到達できる能力があると考えます。

 

■短所、限界、になり得るところはどのような点か



では、逆に彼のビジネス人生から演繹的に連想し得る、氏の弱点、リスク、限界はどこか

 

<弱点仮説1>:世の中を、「ゼロサム」の要素で捉えすぎてるため、「成長」に関する本質的関心が薄い

 

不動産ビジネスが、立地、企画、管理の3要素で成功しないと成りたたないのは事実ですが、一方で、不動産ビジネスは、土地そのものがなければお話にならないのも事実です。そして、土地は、原則として増えない。(世界の陸地面積は基本的に一定)。従って言い換えれば、他のビジネスに比べて、「他人が得れば自分が失う」というゼロサムの要素がどうしても強くなります。

 

 

これは、これまで全くなかったものが新たに価値を生む(ネットがない世界にネットが生まれたり、ガラケーの時代にアイフォンが生まれるなど)というイノベーションの本質=成長の本質とは少し異なります。彼の世界観の中に、「他人(他国)が得をするのは自分(自国)が損をしているからだ」という思想が垣間見えるのは、彼のビジネスバックボーンに寄るところがかなりあるのではないかと感じます。

 

 

成長とは、本来みんなが獲り得るパイの総量を増やすことです。従って、成長が実現する世界は必ずしもゼロサムではないのですが、世界をゼロサム的と捉えている(ように見える)氏にとって、イノベーションにより成長が実現するというのは直感的に理解しにくい部分と思われます。

 

 

したがって特にテクノロジーベンチャーの成長や発展といった領域は、氏から圧倒的な支援を得られるとは考えにくい。むしろ、ゲームチェンジャーといわれるような、既存の業界の慣行や収益モデルを根本から破壊するタイプのイノベーションは、経済のゼロサムゲームにおいてオールドエコノミーサイドに立っている氏からすると、将来的には敵と見做され、規制の対象になる可能性もあると予測します。(個人的には、ウーバーに対してトランプ氏がどのように対処するか、しないか、が一つの重要なポイントだとみています)

 

 

<弱点仮説2>ビジネス人生でただの一度も、「ボス・支配者」に仕えたことがなく、「説明」が下手

 

トランプ氏のビジネス人生を俯瞰してみると、基本的に、「ボスに仕えた(雇われた)」期間が一切ないということに気が付きます。彼のビジネス人生は、父の仕事を手伝うことから始まっており、強いて言えば父親が唯一のボスとも言えます。しかし、25歳ですぐに事業で独り立ちしたトランプ氏にとって、父親がボスだったという感覚があったとは想像しにくい。

 

どちらかというと、父親はよきメンターであり、尊敬するファミリーの長というポジションでしょう。その後も、経営姿勢や哲学で影響を受けた弁護士など、数々のメンターから影響を受けたと自分でも回顧しているトランプ氏ですが、それらはいずれも、メンターであって、ボスではありません。

 

また、2代目社長という立場で、最初からある程度の(実はあまり多くはなかったようですが)蓄積された資本があった彼は、創業資金を調達するために親戚や親、友人等に頭を下げて出資をお願いする必要もなかったし、下請け仕事をこなしておカネを貯める必要もなかった。今風にいうならエンジェル投資家やベンチャーキャピタルに事業計画を説明して、資金提供をお願いしたりする必要もありませんでした。

 

さらにその後、トランプオーガニゼーションが巨大になっても、自分の会社を株式公開することは決してありませんでした。従って、トランプ氏は、「他人に統治され、権限を委任されて業務を遂行し、その結果をボスや統治者(株主等)に説明する」という、いわゆる「受託者として、言葉を尽くして説明責任を果たす」、という行為をほとんど必要とせず(または避けて)ビジネスをしてきたといえます。

 

だからトランプ氏は、利害関係者(例えばマスコミとか自分に反対の有権者)が「正確な説明」や、「真意」などの説明を求めても、「反対ならお好きにどうぞ。このディールにはかかわらないでください。さようなら。」という態度になってしまうのではないか。「反対されたら別れて、それでおしまい。説明する必要などない。」というビジネス感覚なのではないかと感じます。

 

このような経営者にとって、ほぼ唯一、説明責任が生じるのは、やはり「ファミリー」です。トランプ氏がなによりもファミリーを大切にし、ファミリーのアドバイスにはしっかりと耳を傾けるのは、トランプ氏にとって唯一最大の利害関係者であり、アカウンタビリティが生じるがファミリーだと考えているからにほかならないでしょう。

 

トランプ政権へのファミリーの影響力は間違いなく大きく、時にそれが暴走した場合には、大きな不確実性をはらむと予測されます。有権者への説明責任の必要性についても、賢明なファミリーの誰かが真摯に忠告しない限り、トランプ氏の「説明不足」は常に政権の不安定要素であり続けることになると思われます。

 


<弱点仮説3>:為替を知らない(多分)

 


トランプ氏のビジネス経歴を見ていくと、海外ビジネスに関する豊富な経験は見受けられません。過去にロシアでモスクワにトランプタワーを建設する計画があったこと、ドバイなど中東のカジノ建設に関わった程度のようです。従って、グローバルなビジネスにおいて、為替がどのくらい死活的に重要か、自分の肌感覚、勘としての「正解」は特に持っていないのではないか、と感じます。

 

特に、今後米国が利上げ局面を迎えていくとみられる中で、それに伴うドル高をトランプ氏が国益とみるか、そうではなく、オールドエコノミーを支え、国内産業育成につながるドル安を国益と捉えるのか、ここが全く見えません。

 

 

私個人としては、為替戦争こそ、トランプ氏が大得意とするゼロサムゲームの究極の形です。(両方の通貨が同時に安くなることはあり得ない) トランプ氏がそれを理解したとき、どのような取引を世界に仕掛けてくるのかが、世界経済の最大の不確定要素だと考えています。普通に考えれば、国内産業保護のトランプ氏は、ドル安推進派のはずです。それを周囲の経済インテリが、いやそうじゃない、経済の教科書では・・・と諭しているように見える中で、氏としては一応強いドルは国益という立場を承知としているように見えます。

 


しかし彼独特の学習能力と天才的なカンが、役に立たない(とおそらく彼が考えるであろう)経済の教科書論を超え、独自の勘に基づいて判断してなお、
強いドルを容認するのか否か、これが結局のところ、トランプ政権の経済政策の最大のポイントになると予想します。

 

<本コラムの結論>

 

トランプ氏を一言で言い表すなら、「ヤンキーの虎の神」。2代目経営者として成り上がり、ファミリーと信用できる仲間を大切にし、これに敵対するものは全力で叩き潰す。しかし、仲間とファミリーは徹底的に守る。大統領になった今、ファミリーや仲間とはアメリカ合衆国のことであり、この仲間を守るために敵とみなすものは徹底的にたたき、最後には勝つ。

 

■優れた「ディール交渉能力」により、アメリカの国益を最大化する交渉を積極化しつつも、「アメリカの総取り」になるほど他国から搾取はしないため、トランプ大統領のものとで、世界経済の地政学リスクは相対的に低下し、安定する。

 

■米国経済は、オールドエコノミーを中心に安定し、一定の成長を継続的に実現する。

 

■しかし本質的なイノベーションによる成長が政権により加速されることはなく、既存の産業構造を破壊するような「破壊的イノベーション」については、規制が強化される可能性さえある。

 

■ドル高が米国の国益に反する、とトランプ政権が判断した場合、日本は再びかなりの円高リスクにさらされる可能性がある。

So what 2016 ~2035年 日本で販売される新車の8割以上はエコカーに~

作成日:2016年11月28日(月)

気になる数字をとりあえずいじる。
So What?(だからなんだ?)といわれてもいい。
とりあえずいじる。ということで、書いております、So What 2016コラム。

 

今日の数字は

 

84.3%  です。

 

 

2035年に販売される新車の84.3%は、「エコカー」になる、という予想(富士経済)です。以下のグラフは、日本の新車販売市場においてエコカーの割合がどのように変化していくかの予想を表しています。(以下の分析は、この予想結果について、弊社も基本的にサポートしている(だいたい当たると思っている)という前提に立っています。)


gurafu J2

 

この数字は世界の他の地域と比較しても群を抜いた数字です。同様の数値を他地域で見てみると、

 

 

北米:27.7%
欧州:22.6%
中国:8.4%
アセアン・アジア他地域:5.7%

 

 

日本における84%という数字がいかに突出しているかが良く分かります。この要因は、グラフを見れば一目瞭然です。日本におけるハイブリッドの普及が他地域に比べて顕著なためです。これは、トヨタのプリウスやホンダのフィットに代表される、日系OEMのハイブリッド技術が外資系OEMを圧倒していることが背景にあります。

1997年に発売されたトヨタのハイブリッド技術は、世界の自動車産業の競争関係に大きな影響を与えました。米国や欧州の企業が最も好む、「デファクトスタンダードやプラットフォームを握って圧倒的な超過利潤を獲得する」戦略を地で行くのがトヨタのハイブリッド戦略です。

これは、逆に言えば、他人が作ったデファクトスタンダードやプラットフォームに乗っかることが死ぬほど嫌いな欧米OEMを大いに刺激し、対応策としてのクリーンディーゼル戦略やPHEV戦略(プラグインハイブリッド)戦略を推進させるきっかけとなりました。

しかし、結果としては、クリーンディーゼル戦略は思うような環境性能を実現できずに排ガス不正問題を露呈させ、プラグインハイブリッドは充電設備の不足や、内燃エンジンを搭載する必要があることから軽量化にも限界があり、デファクトスタンダードには現時点ではほど遠い状況です。それだけトヨタのハイブリッドが特別抜きんでているといってよいでしょう。

今、特に欧州のOEMは次世代自動車の中核としてEVを据えなおし、バッテリー性能の向上と、内燃エンジンを搭載しないで済むことによる大幅な軽量化の実現で、EVの航続距離を飛躍的に伸ばすことに巨額の予算を投じています。こうした投資の成果が一気に出てくるのが、2020年以降と言われています。こうした中、日本でも今後ハイブリッドだけではなく、EVの研究開発も急速に進むことになるでしょう。

見るとすぐわかりますが、上記のグラフにはもうひとつ他地域にない特徴があります。それは世界の主要地域で、唯一日本だけが、顕著な販売台数の減少に直面するということです。縮小する国内市場と、急速に普及するエコカー。そして、海外市場におけるトヨタをはじめとする日系OEM包囲網。今後はさらに米国トランプ政権による日本の自動車産業(特に輸出)
への圧力も再度強まるかも知れません。


2020年以降、電気自動車が走る姿を当たり前に見かけるようになる中で、日本の自動車OEMと優秀な日本のサプライヤーが、引き続き現在のプレゼンスを保てる保証はありません。国内雇用者数の実に1割を占め、貿易黒字の5割を稼ぎ出す自動車産業は、まさに日本産業の王様です。エコカーをめぐるメガコンペティションに、日本のOEMが勝ち抜くことを祈ってやみません。そしてその勝負の帰趨は、今後5年で決まると思われます。

トヨタEV参入の衝撃~100年に一度の自動車産業構造転換の号砲~

作成日:2016年11月26日(土)

トヨタ自動車が2020年の本格市場投入を目指して、EV事業に参入することが発表されました。大統領選のニュースにかき消されてしまった感じのこのニュースですが、これは、自動車産業全体、ひいては日本経済の産業構造にも今後影響を与えかねない大きなイベントといえます。

 

トヨタ自動車は、これまでいわゆる次世代自動車(HV,HEV,PHEV,燃料電池、EV他)のカテゴリーの中で、1997年に市場投入されたプリウスに代表されるハイブリッド車(HV/HEV)の領域で他社を圧倒しつづけてきました。

 

ドイツメーカーがPHEVやクリーンディーゼルを強化し、中国系メーカーがEVに注力してきたのも、トヨタのハイブリッド車の完成度が高すぎて、追随しても絶対に勝てないことが明白だったためとも言えます。

 

一方でトヨタは、EVについては、電池性能の限界と充電インフラの不足から、EVの早期普及は難しいとの判断で、EV開発への経営資源の投入には消極的でした。

 

確かに過去を振り返ると、EV事業領域では、いくつもの「壮大な失敗事例」が存在します。特に印象的だったのは、EVの航続距離の短さと長い充電時間等を、クイックドロップ方式(バッテリーをスタンドで交換できる方式)で解決しようと試みた、イスラエルのメガベンチャー「ベタープレイス」の倒産でしょう。

 

5,000億円以上を世界中の投資家(有名VC含む)から調達したものの、事業は失敗し、2013年に清算されています。このような、EV新興勢力の相次ぐ討ち死にもあり、自動車業界では、「少なくとも2040年以降まで、EVが次世代自動車の主流になることはない。」というのがコンセンサスとなってきたように感じます。

 

しかし、EV普及の最大の原因とされる、1充電あたりの航続距離の長さは、特に日本の電池メーカーが主導する技術革新競争により、予想を上回って急速に伸びてきました。

 

さらに、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題もあり、内燃機関を併用する環境車の環境性能には限界があるという認識も高まり、ついにドイツでは2030年までに内燃エンジン車(ガソリン車)の新車販売禁止を求める決議が採択されました。

 

こうした流れの中で、フォルクスワーゲンは、2016年6月に発表した中計において、2025年までにEV販売を最大300万台、グループ販売全体の最大25%という大幅なEVシフトを発表します。これは現行3万台程度の販売を、今後10年で100倍にするという非常に極端な計画です。

これは、排ガス不正問題で失った信頼とブランドの回復という、フォルクスワーゲンの生き残りをかけた姿勢の表れでもありますが、ワーゲンは、世界最大となった中国の自動車市場で高いシェアを持つため、あながち実現不可能ではないかも知れません。

 

では、他社が既に一歩先んじでEVに経営資源を投じている中、トヨタのEV参入は、他社と比較して遅きに失したのか。これは必ずしもそうとは言えないと思われます。EVは、構造がシンプルで、部品点数も少なく、ベンチャー企業でも既存の技術を統合していけば生産可能といわれます。逆に言えば、複雑な内燃車で世界のトップを走り続けるトヨタにとって、少なくとも技術的には十分キャッチアップ可能な領域です。

 

充電池の能力についても、世界最大の自動車製造会社であるトヨタと、電池会社が取引を望まないわけがなく、独自技術とアライアンスで、短期間でトップクラスに躍り出るでしょう。トヨタには十分勝機があり、逆にEVで先行する各メーカーの方が、トヨタ参入に戦々恐々としているはずです。

 

そして実は、トヨタのEV参入宣言には、本質的に自動車産業の構造を揺るがす大きなメッセージがあります。それは、戦後の日本経済のエンジンとなってきた、部品メーカーの系列構造に代表される自動車産業そのものの構造転換です。

 

自動車はおよそ3万点の部品から成り立っています。このうち、内燃型エンジン(ガソリン、ディーゼル等)の部品点数は約8,000点あり、全体の3割近くにもなります。EVが普及するということは、これらエンジン部品のサプライヤーは主業を失う可能性があるということになります。トヨタのEV宣言は、特にエンジン部品を製造するサプライヤーに対する、自立を促すメッセージとも言えます。

 

一方で、当然電気モーター部品のメーカー等にとっては、広大な新規マーケットが開かれることになるでしょう。自動車に関するイノベーションとしては、自動運転が大きく注目されていますが、EVシフトは日本の自動車産業に、よりダイレクトな影響を与えるといえます。


富士経済の予想では、2035年時点で、世界の自動車販売における環境対応車の比率は12%程度。破壊的な構造転換までは予測されていません。しかし、トヨタのEV参入を契機として、今後さらにこのスピードが加速する可能性は高いと考えられます。


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So what 2016 ~トヨタはVWの4分の1

作成日:2016年07月14日(木)

とりあえず数字を並べてなんとなく語る、~So what 2016 ~コラム

今回の数字は

「4分の1」です。

これは、中国市場における、フォルクスワーゲンの生産台数に対するトヨタ自動車の相対的シェアです。


中国の南シナ海における海洋進出について、オランダハーグの仲裁裁判所は、九段線をはじめとする中国の主張をほぼ全面的に退けました。結果的にはフィリピンの訴えを大筋で認めるという判決になったようです。これに対する今後の中国の対応は、世界経済にも大きく影響を与える可能性のある大きなイベントのひとつと言えます。

いずれにしても、自国の主張を一方的に押し付ける中国の強引な外交戦略は、ある程度修正を余儀なくされるでしょう。中国に安全保障を脅かされ続けてきた日本をはじめとする周辺国は多少は安堵したといったところでしょうか。


このニュースに限らず、尖閣の衝突から始まり、昨年の中国ショックなどもあり、日本では、ビジネスシーンでも中国市場について前向きな議論はほとんど聞かれない印象です。昨年はM&Aマーケットでも、日系企業の中国からの撤退(現地企業の売却)といった案件情報が多く見られた印象もあります。

 

「政治リスクのある中国はもはや魅力的なビジネス市場ではない」

「人口ボーナスが終われば中国経済は成熟期に入り成長は停滞する」

「賃金が上昇した中国は、生産拠点としてはもはや魅力はない」

「隠れ不良債権問題が表面化し、中国経済は崩壊する」

「爆買い需要も花と散った。もう中国需要も終わり」

日本のビジネスシーンにおける現在の中国の印象をざっくり総括すると大体こんな感じでしょうか。しかし、「それ、ほんと!?」というのがこのコラムの主題です。


このグラフは、世界の自動車生産台数予測(~2025)年をまとめたものです。2020年には、実に世界の自動車の4割が中国で生産されることが予測されています。販売の数値はここにはありませんが、販売でも中国がダントツの1位です。


中国生産台数

出所:マークラインズデータベース等からイグナイトパートナーズ作成

こうした、生産台数、販売台数の予測には、いわゆる需要予測という手法が用いられます。これは、GDP成長予測や人口動態、所得水準など、自動車の購買、消費に重要な影響を持つ因子から将来の需要を予測するモデルを構築する手法です。自動車のように、過去の先進国における普及率の成長推移や、各国の今後の成長に関する因子(GDP等)が詳細に入手できる領域では、こうした需要予測は比較的精度が高いことが統計的にも知られています。

では、中国における自動車生産をメーカー別にみるとどうか。それをまとめたのが次のグラフとなります。

中国生産ランク

1位はGM、2位はフォルクスワーゲン。(これは2013年の生産実績。販売実績では、フォルクスワーゲンが現在トップに立っています)フォルクスワーゲンが中国で販売を伸ばしているのは有名な話です。これは、おととしに、トヨタを抜いて販売台数世界1位になったことがあるからでしょう。

しかし、米国のGMも全く引けを取らない位、中国でのプレゼンスを確立しています。一方、日系では日産が最も健闘していますが、欧米の2社には遠く及ばない状況。2025年には世界の自動車の4割を生産する中国で、日系メーカーはこの状況です。

家電業界がもはや世界に誇れる日本の産業ではなくなった今、自動車及び自動車部品産業は、産業立国日本の最後に残された牙城です。世界最大の市場で、日系メーカーが圧倒的に欧米系に負けていて、いいはずはありません。

1978年に、鄧小平により改革開放路線に転じた中国は、日中平和友好条約締結のために来日したおり、日本の主要企業に対し、熱心に中国進出をアピールしました。この中に当然トヨタ自動車もあり、鄧小平自ら熱心にトヨタ幹部に進出を依頼したといいます。

ところが、中国の要請に応じて中国進出を決めた新日鉄や松下に対し、トヨタはこれを見送ります。(一節にはその時「中国の人がトヨタのクルマを買えるようになるまで、一体何年かかるでしょうか」という態度をとったことが、鄧小平の大いなる怒りを買ったという逸話がありますが、真偽のほどは定かではありません。)

このとき、中国の招きに応じていち早く中国進出を決めたのが、ドイツのフォルクスワーゲンとアメリカのGMです。この時の判断が、現在まで挽回に至らない中国でのトヨタ劣性の元凶と言われています。

また、このとき、中国に進出を決めた唯一の日本の自動車メーカーが、日本市場での成長が伸び悩んでいたダイハツです。だから中国ではダイハツは今でもフォルクスワーゲンやGMほどではありませんが、一定の知名度のあるブランドとなっています。トヨタのダイハツ買収は、軽自動車の強化のため、と捉えられがちですが、中国進出のためのチャネル買収がその本当の意図です。

トヨタは「油断しない会社」「おごらない会社」として有名ですが、当時国内・北米市場が順調すぎるほど順調だった、トヨタの唯一にして最大の油断が、40年前の中国市場の見誤りかも知れません。

もちろん、安全保障の問題をはじめ、中国と日本の間には国防上の大きな問題がありますが、一方でそういった要素とは別に、2030年に向けた中国の可能性について、冷静な分析と判断が必要と感じます。(なにかあればすぐに撤退、とか、ちょっといいとすぐに進出とか、ではなく)。そのときになって、あのときにああしておけば、という悔しい思いをしない為に。




















 

中国危機は日本にとって本当に危機か?

作成日:2015年10月07日(水)

中国経済の減速が世界経済に与える影響が日々のニュースをにぎわしています。中国経済の危機はリーマンショックの再来になる、さらには世界大恐慌の引き金になりなり得るなど、経済版ホラーストーリ―が日々ニュースになります。

 

しかしながら、本コラムでは中国経済の減速は当然日本経済にとってもマイナスの影響をもたらすものの、リーマンショック時のような経済危機レベルまでの悪影響になる可能性は低い、と予想します。根拠はいくつかありますが、そのうちの一つは日本経済の中国経済依存度は全体として危機的な影響を与えるほど強くない、という点です。

 

下記グラフは、日本のGDPにおける対中国輸出額の比率の推移です。これを見ると、日本のGDPに占める対中貿易輸出額(いずれも名目)は直近で3%程度です。現在GDPの成長率が1%前後とすると、GDPの3%という比率は決して小さいとは言えません。この対中輸出の内訳は、半導体、有機化合物、科学光学、自動車部品等ですから、これらの産業はかなりの影響を受ける可能性があります。

 


 

 

中国経済分析1 対中輸出比率


 

 

一方で、対中輸出と対中輸入の差額=対中貿易収支の推移を見たグラフは以下の通りです。対中貿易収支がに関しては、ほぼ一貫して輸入超過であり、対中貿易収支は赤字が続いています。近年のアベノミクス以降は、円安により輸入価格が相対的に上昇したため、さらに赤字が拡大しています。実質貿易収支は残念ながら不明ですが、対中貿易をネット(純輸出ベース)で見た場合、GDPに対して少なくとも大幅にプラスに影響しているとは言えなそうです。

 


 

中国経済分析2 対中貿易収支

 

財務省統計よりIGNiTE作成


 では、中国経済の日本に対する影響は全くもって心配するようなことではないのか。リーマンショックのような事態は本当に起きないのか。これに対する回答の一部は、以下のグラフにあります。これは、リーマンショック前の2006年時点を100として、各国の対円為替レートがどの程度変化したかを表しています。リーマンショック後の米欧の大規模緩和により、形式的にドルペッグされている元も大幅に円に対して下落します。

 

リーマンショック時、日本企業のバランスシートは総じて健全でした。危機に落ちいったリーマンブラザーズの事業を野村が買収し、モルガンスタンレーの事業を三菱が買収したのもこのタイミングです。バランスシートが世界のどこの国よりも健全だった日本企業が、その後リーマンショックの全体の回復が最も遅かったのは、白川日銀の失策により日本が通貨戦争に負けたからであり、日本企業が弱かったからではないのです。

 

中国経済分析 為替


 

 では今はどうか。日本企業のバランスシートは以前健全で、為替レートは当時よりはるかに円安になりました。このような要件のもとで、経済的な依存度が必ずしも高すぎるとは言えない中国経済の失速が、日本経済に直接深刻に影響することはないと予想します。

 

個人的には、日本経済におけるバッドシナリオは中国の経済悪化ではなく別のところにあると考えます。それは、消費税再増税です。

 

前回消費税増税延期を安倍内閣が判断し、解散総選挙に売ってでたとき、日銀は歩調を合わせて緩和しました。消費税増税を後押しするためです。黒田総裁は歴史に残る総裁だと思いますが、残念ながらやっぱり財務省アルムナイの一員だということが判りました。そう考えると、次の消費税増税までは追加緩和はない可能性があります。バズーカ―は打ちすぎるとマーケットへのインパクトが薄れて効果がなくなるからです。

 

中国経済の影響を懸念するといっても、統計情報の信頼性が低く実態がわかりません。米国の利上げも、これまでのセオリーなら円安要因ですが、経済の不確実性が増す中では回避通貨として円が買われる可能性が常にあります。このような不確実な環境下では、消費税増税とセットでの金融緩和などという内向きの政策判断はせず、一ドル120年前後の現在の水準を防衛ラインとして日銀は毅然とした金融政策を遂行する必要があります。しかし、日銀が消費税増税ありきで、金融緩和をそれとセットにすることに拘泥するようであれば、日本経済はもう一度リセッションに陥る可能性が高まると予想します。しがない零細企業経営者としては、そうならないことを切に願います。

 

 

So what 2016 GDPの内訳を25年分並べてみた・・・

作成日:2016年03月03日(木)

今からほぼ1年前に非常に話題になった、トマピケティ教授の「21世紀の資本」。

経済の分野で久々の話題作ということで、購入したものの、読むのには相当な根気と時間が必要で、いまだ完読せず。しかし、ピケティ先生の分析は、内容は別にしても、そのアプローチからも非常に示唆があります。ビックデータ分析の有用性が言われて久しいですが、どんなにでかいデータでも、意味合いを抽出できなければただのガラクタです。そういう観点では、納税に関する歴史的な統計データを「ひたすら時系列を長くとる」(なんと300年超!)ことで大きな示唆を示そうとしたピケティ先生の試みは、データ分析の観点からも金字塔かも知れません。

そこで、すごいと思ったらマネてみよう!ということで、300年には遠く及ばないものの、1980年以降の日本の「低成長時代」の25年間(1980年~2015年)のGDP内訳の推移をグラフ化してみました。ちなみに、たった25年でも、統計的には連続したデータがなく、これ作るだけで結構大変です。・・・300年やろうと思ったらどんだけのことか・・・

中国経済分析

注)このグラフは、積上げグラフではなく、単純な面グラフである。


 

 

もっともはっきりと特徴的なのは、やはり1989年のバブル崩壊です。これを機に急拡大していた民間投資が一気に縮小し、これを上回る規模で政府支出が増えてきていることが判ります。1989年以降、日本の民間投資の水準は1度もバブル期のピークの水準に戻っていません。

一方で、民間消費を見てみると、(自分としては)意外なことに、バブル崩壊後も1997年(金融危機前)までは、一貫して消費支出が増えてい点です。これは人口がまだ増えていたからと推察されます。しかし、それ以降、民間消費支出も横ばいとなり、GDPの規模を維持するために政府支出が大きな役割をになってきている様子が伺えます。

このままどんどん消費税率があがれば、GDPの最大の構成要素である消費が(ただでさえ人口減少で減っていくのに)さらにブレーキがかかり、その分財政支出が拡大し続けることになります。少子高齢化の必要コストといえばそれまでですが、やっぱり経済資源の分配が、市場機能中心から政府中心に実はどんどん変わっていくというのは、民間人としてはなんとなくさみしいところです。


 

量的緩和縮小はいつか?

作成日:2013年09月07日(土)

2013年9月8日から2013年の年末にかけて外国為替に大きく影響を与える可能性があるイベントが続きます。今回のコラムは、これから13年末までの比較的短期の間に起きるだろう大きなイベント事項について、その帰結を予測してみたいと思います。

 

2012年は「世界のリーダーが交代(または再任)する年(大きな選挙が続いた年)」といえます。そして2013年は、新リーダーのアクションの年といえます。また、重要なイベントも多く、それらが新リーダーにより差配されて、その結果が2014年以降の大きなトレンドの源になるのではないかと思います。今日から年末までの100日はこうした新たな「止められないトレンド」に影響を与えそうなと思われるイベント事項が多くあります。

 

 

 

ではこの100日になにが起きそうなのか?私なりに予測してみたいと思います。 

 

①2013年9月8日:2020年東京オリンピック開催が決定する。

②2013年10月~11月:消費税増税が決まる。(ただし、段階的増税になる可能性あり)

③2013年10月~11月:消費税増税に合わせて日銀の量的緩和策が強化される。

④2013年10月~11月:成長戦略の工程表が決まる。 ⑤2013年12月:FRBがフェデラルファンドレートの切り上げを決める。

 

その結果として、

・ドル円レート:110円~115円 ・日経平均株価:18000円~19000円 ・新興国経済の減速・低迷(特に中国および中南米)

 

 

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その根拠は

 

①⇒オリンピック候補としての東京の最大の懸念は原発問題です。これについては、G20を途中退席してまで現地に飛んで、安部総理が自ら世界に向けて安全対策をコミットするというのはとても重いことだと思われます。(一国の総理の言葉は軽くない)。スペイン(財政危機)やイスタンブール(紛争)の問題は、だれかがコミットすれば懸念が払しょくされる(または軽減される)というたぐいのものではないから、問題の質が違うと思われます。(もちろん原発の問題はとても深刻であることは当然の前提です)。だから、決選投票になったとしても東京が勝つのではないかと思われます。

 

②⇒消費増税は実施されると思います。消費税増税しない場合、逆に日本の財政リスクが懸念されて長期金利が上がってくる可能性が高いと考えられます。段階的にやるか、一気にやるかの方法論はありますが、上げないという選択肢はないように思われます。

 

③⇒そして消費税をあげる以上、日銀は必ず金融緩和を強化すると思われます。これが再度円安を誘導すると予想します。

 

④⇒安部政権は、ねじれが解消して当面怖いものなしだから、今回は成長戦略についても、結構思い切った具体策が入ってくると期待します。

 

⑤⇒FRBは、米国の失業率が7%を切ってくればQe3(量的緩和策)を終了させると思われます。そして結果として日米金利差が拡大して円安が本格化する、新しいトレンドに入るのではないかと想定されます。一方で、米国の金融緩和が縮小されれば、緩和の恩恵に預かっていた新興国(特に中南米でしょうか?)はかなり大きなダメージを受けることが懸念されます。(個人的にはブラジルビジネスにかかわった経験があり、かの国がとても好きなので、今後のブラジル経済が心配です)

 

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その結果として、日本は「失われた××年」から脱却する糸口を2013年末までにつかむのではないかと期待します。

私は、アベノミクスの帰結をスタグフレーションと予想していますが、限定条件付きでこれは撤回したほうがよいかもしれません。その限定条件とは、やはり①の東京五輪開催決定です。

 

五輪開催が決まれば、人々の期待に対する働きかけ(要は明るい気分になる)や、内需への寄与はかなり大きいと思われます。私がアベノミクスの帰結としてスタグフレーションが起きると予想した根拠は、名目賃金が上がらないから、という理由です。しかし、東京五輪の決定を契機として、内需の高まり、消費の高まりが円安に後押しされ、強力な景気回復軌道に乗る可能性があると思われます。

 

 

 

 

 

経済学の教科書には、賃金の上昇は労働需給のひっ迫によってもたらされる、と書いてあります。 要は、良心的な経営者が従業員のことを思いやって賃金を上げてあげるから、ではなく、「人が足りないから高いかね払う必要がある」という状態が本当の賃金上昇、という意味ではないかと思います。

 

こうした動き(労働需給のひっ迫)は、東京五輪決定を機にまずは流動性の高いアルバイトや派遣から強くなっていって、1~2年程度で正社員にも波及してくる可能性はあると思われます。したがって、五輪が決まればスタグフレーション予想は撤回です。

 

ただし、五輪が決まらなかった場合は、スタグフレーション予想は据え置きかと思います。東京五輪(①)がなくても、②~⑤といった変化は起きると思われますが、その場合の経済へのインパクトはあまり力強くはならないと予想します。なぜなら、その場合は円安によるコスト高のマイナス面のほうが、その他のプラス効果より経済に大きく影響するように思えるからです。

 

被災地の方々の心情、厳しい現状にも配慮しつつ、東京五輪決定で被災地も含む日本全体が明るくなることを願います。

 

 

 

 

 

 

 

アベノミクスの経済的帰結

作成日:2013年02月04日(月)

 

 

2013年初頭から、ニュースをにぎわせている経済テーマは、何と言ってもアベノミクスです。2013年以降のビジネス環境に直結する、国運をかけた前代未聞の壮大な経済実験の帰結について、コラムでも少し突っ込んだ予測をしてみたいと思います。

予測:
2013年末のドル円相場は110円を予測。しかし、2014年以降景気は後退し、スタグフレーション(景気後退下の物価上昇)がおきる。

予測の根拠は次のとおりです。

①米国による円高修正の容認。

②欧州各国の輸出批判に対抗できるだけの外交力発揮。

③消費者物価指数の2%上昇は需要の拡大ではなく、輸入コストの増大によって実現する。

④結果としてスタグフレーションが発生する。

アベノミクスは国の命運をかけた壮大な挑戦であり、私は大賛成です。しかし、政策としてのアベノミクスがよりよいものになるにはいくつかの条件があるのではないかと考えます。

 

 

まず、そもそもアベノミクスは継続可能性があるのかないのか(一過性の政策ではない)、という点については、明確に「継続性あり」だと思います。 

 

1970年以降の日本の経済史は、常に米国との関係の中で決まってきたというのが私の勝手な見解です。米国は、これまでの日本に対する統治方針を「生かさず殺さず管理する」というスタンスを、「対中防共堤として積極的な役割を担わせる」という方針に転換してきていることがかなり明確になってきています。

そして、そのためには日本の経済力が一定程度の国力を保ち続けることが必須となります。したがって、今回米国が円高の修正に反対することはない。したがって日銀人事も、7月の参議院選挙も、アベノミクスにとっていい方向にしか行かない、これはほぼ間違いないと思われます。

さらに、米国の経済は回復基調にあり、長期金利も上昇しつつあるため、基本的には米国の金利は日本を少し上回る形で日米金利差が生じるトレンドが生じ、円安傾向をサポートするのではないかと思います。

 

 

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②円高修正に対する他国の批判としては、自動車産業などで深刻に競合しているドイツ等の反対がすでに顕在化していますが、日本は米国以外の諸外国に対する外交力は十分にあり、これらが外圧となってアベノミクスを阻害することにはならないと考えます。(唯一の懸念となりうる中国は、現時点ではそもそも為替を完全に故意に管理しており、為替政策に関する批判できる立場にない)。こう考えると、アベノミクスによって不利益をこうむりうる諸外国からの外圧は、今回基本的に深刻にはならないと思います。

③インフレ目標の採用数値である消費者物価指数CPIは「全国の世帯が購入する家計に係る財及びサービスの価格等を総合した物価であり、ここから生鮮食品を除いたもの」ですら、いわばざっくり、家計が消費する生鮮食品以外の財の価格ということになります。金融緩和は、より直接的に株式や不動産の価格を上昇させますが、この効果は直接CPIの上昇につながるわけではありません。

したがって、金融緩和効果がCPIの上昇を生じさせるためには、いくつかのルートを経る必要があります。具体的には円安による輸出型企業の業績拡大に伴う業績の改善を原資とする、雇用の増大や賃金の増加、または株式・不動産の価格上昇が消費を誘発する「資産効果」です。今回の金融緩和は、この2つのいずれももたらさないのではないか、というのが私の仮説です。

まず、円安による輸出企業の業績改善が自然に雇用の増大や賃金の上昇につながることはないと考えます。現代の企業は「利益を最大化することが最大の使命」と考えており、得られた利益は株主還元か負債の返済に優先的に利用されます。本来は設備投資に回すべきですが、現在日本企業は萎縮モードであり、投資のマインドはとても弱い状態です。つまり、売上が上がったからといって、それが雇用の増大や賃金の上昇を自然にもたらすメカニズムは現在の日本企業の運営メカニズムにはビルトインされていない。(いいとか悪いとか、社会主義賛成とかいうわけではなく、あくまで事実として。)

次に、バブルを発生させることにもなった資産効果(株式や不動産などの資産価格の増大が消費を増大させる)はおきるのか、という点ですが、これも私は否定的です。日本の家計部門は、1500兆円の貯蓄超過といわれていますが、そのほとんどは高齢者が保有しており、老後のたくわえを株式に投資し、その含み益で過剰に消費を拡大するというような行動はまず起きないと考えます。

 

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 一方で生産年齢にある家計(子育て世代)では、もっとも支出が必要にもかかわらず賃金があがらず貯蓄もできない、という状況にあり、この世代が株式や不動産に投資をして、さらに消費を拡大させる、という行動はとらないと考えます。(原資がない)。

賃金もあがらず、資産効果も得られないなかで、消費者物価が2%上昇するのは、輸入財価格が上がって、コストプッシュ型のインフレが起きる場合です。

 

この場合、名目物価の上昇率より名目賃金の上昇率が低い状況になり、家計は実質所得の目減りとなります。これがもし本当に顕在化すると、消費はマイナスになる可能性すらあると思います。

 

さらに名目賃金の上昇率は名目金利の上昇率を下回る可能性があり、このような場合には、家計はより深刻な状況になると考えます。このようなコストプッシュ型のインフレが起きるのは、円ドルが少なくともリーマンショック前以下の水準になることが必要と思いますので、そう考えると一ドル=110円前後ではないか、というのが予想の根拠です。

 

 

 

そして、このような事態になったときにおきるのは、いわゆるスタグフレーション(物価上昇下での景気後退)です。これがアベノミクスがもたらす2013年末から2014年に向けた、ひとつの帰結の可能性と考えます。

これを防ぐには、利益の一定率を優先的に賃金や新規雇用に当てるような制度、そうした利益分配方針に対する税制の優遇などがどうしても必要と考えます。社会主義的といわれるかも知れませんが、こうした利益の従業員分配を制度化して、中間所得層を拡大させている国はたくさんあります。経済全体の需要を増やすには、こうした施策が必要と思います。

もちろん、なにより大事なのは、安部総理がいう三本の矢の3つ目である、「成長戦略」であることは間違いないのですが、これは言ってみれば「だれも反対できない水戸黄門の紋所」みたいなものであり、正論だけど誰かが音頭を取ったら実現できる類のものではなく、決して一朝一夕にはいかない。それこそみんなが汗水たらしてがんばるしかない。

そう考えると、政策として人為的に実現し得ることとして重要なのは、円安による利益の増大や資産価格の上昇をいかに健全に消費拡大につなげるかであり、そのためには利益の従業員分配や賃金の上昇がどうしても必要、と考えます。まあつまるところ、名目賃金率の上昇が起きない限り、長期的にはスタグフレーションに陥る、というのが私の今回の未来予測です。

もちろん、こんな不幸なことがおきることのないよう、日本企業の行動原則が少しずつ変わることを願います。

 

 

 

 

 

 

 

 

中国のGDPが日本を抜いたことが意味すること

作成日:2010年08月25日(水)

 

中国が実質GDPで日本を抜き、世界2位の経済大国になることが確実となったそうです。10年前に世界7位だった国が、10年たたないうちに2位になるというその成長スピードはやはりすごいスピードです。

個人的に面白いと思ったのは、このニュースに対する中国の論調です。直接中国語を読んだわけではありませんが、いろいろな報道を見ると、「勝って兜の緒を締めよ」的な冷静な論調が多いようです。一人当たりGDPで見れば、中国は09年度で99位。(日本は16位) まだまだ国民一人一人の豊かさでは後進国ということ、浮かれてはならん、ということのようです。

なにが面白いと思ったかというと、これとまったく同じ論調の記事が約40年前、日本のGDPがドイツを抜いて2位になった時の経済専門誌に記載されていたのを読んだことがあったからです。

 

 

たしか、タイトルは「2位と20位」でした。そのときの論調は、GDPでは2位になったが、一人当たりのGDPは20位、他の欧米諸国と比べたら、まだまだ貧しい。さらには公害も深刻化して、自然が破壊されている。こんな豊かさはいびだ!といった論調だったと思います。

では、現在の中国が40年前の日本と同程度の経済発展段階にあると過程したい場合、今後の中国について、1970年代以降の日本の歩みから得られる示唆はなにがあるのだろうか、と考えてみます。

1970年以降の日本経済の歴史を考えるとき、やはり重要な転機となったものは、「プラザ合意」とその後の円高ではないかと思います。 では、これを中国経済に置き換えて考えた場合、近いうちに中国も、「北京合意」とか「ハワイ合意」を経て変動相場制への移行し、「元高不況」を迎えて成長が低迷していくのでしょうか。

 

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「固定相場制により、実態と離れた円安水準にある日本は、世界に失業を輸出している」というのがプラザ会談における世界の問題意識であり、変動相場に移行してこれを是正すると同時に、閉鎖的な国内市場を開放し、日本は「内需拡大」により、世界経済を牽引する「機関車のひとつ」になるべきである(機関車論)。

これが、当時世界から突き付けられた日本経済へのメッセージです。この結果、日本は自国通貨の上昇に耐性がないビジネスモデル「輸出立国至上主義モデル」がプラザ合意から受ける影響を過度に恐れ、「財政拡大」「金融緩和」「為替介入による外貨準備拡大→過剰流動性の増大」と、大判ぶるまいで景気を刺激し、バブルへとつきすすんだあと、一気に転落しました。

しかし、現代の中国は、世界1位の輸出大国である一方で、すでに世界2位の輸入大国でもあり、輸出に過度に依存したビジネスモデルではありません。(2009年時点) また、現状の中国が、世界に不況を輸出しているかというと、そうともいえなそうです。中国は、その巨大な市場の需要に国内の生産力が追いついておらず、このギャップを輸入でまかなうために、市場の開放は(制約付きだが)40年前の日本より進んでいると思われます。(すでに中国は大豆などの主要農作物まで純輸入国となっている)

また、中国の内需を頼って世界が中国向け輸出を拡大している現状は、まさに「中国が機関車となって経済を牽引としている」という一面があり、中国はすでに「世界の機関車」の役目を果たしているといえる。これもやはり圧倒的な中国の規模のなせるわざです。

 

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しかし、中国は、その成長の高さから、少なくとも5年以内には一定水準(現行管理フロートのレベルではなく、少なくとも20%程度の切り上げという意味)の元の切り上げを行わざるを得ないのではないかと思われます。その場合には、そして、次のようなことがおきる可能性があるのではないかとおもいます。

 

予想①:中国企業の生産能力増強が推し進められ、中国企業の能力向上が本格化する。

しかし、さすがにかつての日本のような輸出立国的な部分は徐々に儲かりにくくなるので、国内生産、国内消費の増強という形で「内需拡大運動」がおきる。この部分では共産党政権による「さらなる外資参入規制強化」が起きるかもしれません。(自国産業育成のため)

いいかえれば、今は拡大する経済に国内の生産力が追いつかず、そこを海外企業が埋めている構図ですが、この1部を国内企業によりまかなうという意味で、「内製化」が進む可能性があるのではないか、という予想です。日本のように、内需に対して「人口」というキャップがまだないので、過度な財政出動などしなくても、十分に内需は活発化し、このストーリーは成功する可能性が高いように思われます。

 

 

 

未来予想②:国内で育成が難しくても、金で買えるものはどんどん外から買う。

一方で、強くなった元のパワーを十分に活用して、「外から買ったほうが早いものはどんどん買う」ということになると思われます。中国企業による日本企業の買収が本当に活発化するのは、元の切り上げ実現後、という予想です。

最後に今の円高についてです。

今日も日本円が84円台です。政府がなにもしないことにいらだつ声は大きいのですが、この状況で単独介入するにも効果が疑問視されるのも事実です。

これは完全に根拠のない単なる仮説ですが、世界的な金融緩和でグローバルに飛び回っているマネーが、本当に向かいたい(向うべき?)通貨はなにを差し置いても元ではないか、と思われます。しかし、現行では、元は管理フロート制で、かつ中国は現状での元の切り上げを容認しないでしょうか、相対的に経済が堅調と見られている日本の円に資金が集まりすぎるのではないか。ここには明らかにマーケットのゆがみがあるように思えます。1ドル=84円というのは、日本経済にとってはもはや「致死水準」ではないかと感じます。

日本政府は、長期的には、アメリカと一緒になって、元の平和的な切り上げに向けて中国を説得していく必要があるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

国家戦略と企業戦略のアナロジー

作成日:2010年08月08日(日)

みんなの党が参院選で躍進しました。今回の選挙でみんなの党が得た、「キャスティングポード」を握る第3勢力、というのは、政治が数といわれる世界で、少数でありながらも「戦略的な行動が可能なポジション」という意味で、面白いと思いました。

 

みんなの党がどっちにつくかで、法案の成否が決まる、という局面があり得なくない、というこのポジションを国際外交の世界に当てはめてみたとき、日本の外交戦略、国家戦略に対してなにか示唆がないか、と考えてみます。

 

自民党と民主党に当てはまるのは、国際外交の世界では当然米国と中国です。 そして、今後の世界経済が、この2大国を中心に動いていくであろうことは想像に難くありません。

 

日本は、明治開国以来、「アジアであってアジアでなく」「欧米であって欧米でない」という唯一無二のポジションを取り続けてきました。 そして今の日本は、アメリカという世界大戦後の覇権国と軍事同盟を結びつつ、中国というアジアの新大国と経済面では密接な関係が深まりつつあります。

 

今後も、こうした「経軍分離」(経済面での主要緊密国と軍事面での主要緊密国の不一致)とも呼べる傾向はずっと続くでしょう。 この日本の経軍分離というポジションは、実は世界の外交バランスを考える上で、実は非常にユニークなのでは、と思います。

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中国(や新興国)との貿易で日本企業が稼いで、その一部が税収となり、結果的にその一部が日本の自衛隊予算なり、思いやり予算として米軍事同盟の強化に使われる、ということであれば、巨大化する中国を「上手く使って」返すカタナで中国の覇権拡大に対する抑止力を向上させることになります。

 

3国の関係をこう捉えると、世界のパワーバランスを考える上で実に絶妙であり、日本の役割は大きいと思われます。

 

もし、今後、特にオバマ政権が失敗して、米国がもう一度「ブッシュ的アメリカ」を志向するような未来が来て、アメリカがどんどんおかしな方向に行き過ぎるようなことがおきれば、中国との協力関係を軍事面でも強化するというオプションを持つことで、アメリカに対するけん制にもなり得る(これは現時点ではぜんぜんリアリティーはないけど、理論的可能性としてはあり得るのかもしれません。

 

 

こう考えると、人口も減り、高齢化も進む日本だが、世界における「みんなの党」的なポジションを取って、平和的な世界の発展に貢献する余地は十分にあるのではないでしょうか。このユニークなポジションを生かして、日本がもっともっと能動的に国際社会での地位を高めることができることを願います。 

 

 

 

 

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