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企業戦略とM&Aに関するコラム

企業戦略とM&Aに関するコラム

多角化戦略としてのM&A

作成日:2014年09月16日(火)

 

回は、M&Aを活用することにより、ポートフォリオの多角化を目指すタイプのM&Aについて考察してみたいと思います。

 

このタイプのM&Aは、ポートフォリオ経営の視点から見ると、魅力度の高い市場で競争優位性を持ったポジションをすでに確立している企業を買収し、一気に連結の売上や利益の規模を拡大するという戦略です。

 

こうしたM&Aの特徴としては、より金融投資な視点が強く、既存事業とのシナジーをそれほど重視しないことが挙げられます。まさに、GEのイメルト氏がいう「止められないトレンド」を自社の成長に取り込むために、既存事業ドメインに拘泥せず果敢に買収を実施する戦略です。

 

このようなM&Aはどちらかというとかつての欧米系コングロマリット企業が積極的に行い、多くは結局失敗に終わった、という評価が一般的なようです。一方で、日本企業では、総合商社などはこれに近い狙いのM&Aを実行することがあるように思われます。

 

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トランザクションの特徴・ディールブレークイシュー

 

こうした案件は、買収候補者の戦略によって様々な目的に組み込まれ得るという特徴があります。つまり、ある候補者にとっては多角化狙いの案件でも、別の候補者にとっては、垂直統合や水平統合を目的とした案件になる可能性があるということです。金融投資的な案件という意味では、PEファンドなども強力な買収候補者としてあがってくる可能性があります。

 

魅力度の高い市場で競争優位性を獲得している企業は、キャッシュフローも安定して、財務的にも健全(有利子負債が少ない)であることが多いと想定されます。このような案件はバイアウトファンドにとってはレバレッジをかけやすく、またイグジット戦略も立てやすい魅力的なターゲットとなります。当然このタイプの案件は、水平統合A型の案件同様、グローバル投資銀行がアドバイザーとなって、非常に激しい価格競争(空中戦)となる例が多いと思われます。従って、バリュエーションでどこまで価格の上乗せ勝負ができるか、高値掴みしないためのシビアな判断が求められます。

 

■取引スキーム

 

このような案件では、バイサイドプレーヤーからすると目的に応じた様々なスキームが考えられます。(事業譲渡、会社分割等)しかし、水平統合を目論むプレーヤーは100%買収を提案可能でしょうし、売り手からすればそのほうが魅力的です。基本的には、「歯を食いしばって」シンプルな株式譲渡スキームによる100%買収スキームで最高値を提示する以外に買収成功に至る可能性は低いと思われます。

 

PMIのポイント

 

このタイプのM&Aの場合、ターゲットの事業は、自社の既存ドメインと関連が薄く、そのマネジメントにおいてもターゲット企業の経営陣への依存度は他のタイプに比して必然的に高くならざるを得ないと思われます。ガバナンスの方針としては、基本的には連邦統治主義で、現地マネジメントの経営スタイルを尊重しつつ、レポーティング体制や決済規定等のルールについて、できるだけ速やかに本国と平仄を合わせるような取組みが重要と思われます。

 

これをリスクの面から説明すると、このタイプのM&Aの最大のリスクは、ターゲットの経営陣・キーパーソンの離反、退職リスクです。したがって、買収交渉時点での、現地経営陣のリテンション戦略が、他のケースにも増して死活問題と言えます。

 

このようなM&Aは、「飛び地のM&A」という言い方をされることがあります。M&Aを巧みに活用して企業価値の向上を実現してきた、M&A巧者の経営者ほど、この「飛び地のM&A」はやらない、とおっしゃることが多いように感じます。(日本電産、JT、などなど・・・)

 

この「飛び地のM&Aはやらない」というポリシーは、事業会社からするとこうした案件が取り組むに足る戦略的意味合いが乏しかったり、かつて投資銀行に言われるままにこういうタイプのM&Aを実行した結果、散々な失敗に終わったという経験が背景にあるようです。

 

今回のコラムでは、多角化型のM&Aについてコラムを書いてみました。

次回は、起死回生型のM&Aについて考察してみたいと思います。

 

 

 

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