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ストックオプション発行は何%までならOK?~10%説はほんとうか~

平成9年改正商法前のストック・オプション(SO)制度の旧制度では、付与できるストックオプションは発行済株式総数の10%以下と定められていました。しかし、その後平成13年の商法改正により、この付与制限は撤廃され現在に至ります。


ストックオプションは十分な報酬を現金で支払うことが困難なベンチャー企業にとって、優秀な人材を獲得するためのとても重要な手段となっています。しかし、無制限に発行して良いものではないことは当然です。

 

ストックオプションは、税務の観点(例:税制適格、インセンティブ設計の観点(例:べスティング)など、非常に多面的な検討が必要な、コーポレートファイナンス理論の10種競技といった分野です。しかし、ここでは、将来の株式公開を想定した場合の株価形成の観点に絞って、発行済株式数の何%程度までがSOとして妥当かを分析してみたいと思います。

 

下記は、2014年~2015年8月までに上場した新規公開会社で、ストックオプション目的の新株予約権を発行している企業の発行済株式総数に対する新株予約権の比率を表したものです(SO比率)。発行していない会社及び、目論見書に明記されていない会社は除いています。(メケンですので、完全な正確性や網羅性を保証するものではありません)

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↓ ここから2014年

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これらの企業のSO比率の平均値は、10.73%。中央値は10.16%です。(ちなみに最大値は26%) このデータを見る限りでは、旧商法の規制が撤廃された今でも、結果的には発行済株式数の10%程度というのは一つの目安といえそうです。これは、将来換金目的の売却圧力が強くなりすぎないよう、発行会社と上場主幹事証券が協議してこの程度を妥当と判断しているためと思われます。


ちなみに参考として、これらの企業におけるベンチャーキャピタル比率を見てみると、平均約15%、中央値で約9%となっています。ベンチャーキャピタルは、株式公開までをサポートする投資家ですので、一般的には上場後一定の期間で株式を市場で売却していきます。従って、これもまた株式の需給面ではマイナスと捉えられるため、上場を考慮して資本政策を検討する場合に考慮すべきポイントのひとつとされます。




こうした優先株式やVCの比率については、主幹事証券と発行会社、及び既存株主との間では必ずしも経済的便益が一致しないため、公開に向けて大きな論点となる場合があります。主幹事証券は、市場での順調な株式の消化、安定的な株価の形成、主幹事としてのリスクテイク等々を総合的に勘案する一方、発行会社は調達額(公募する場合)の極大化や既存株主への貢献を考慮する必要があるからです。私自身、投資ファンドで投資先企業のIPOを支援させて頂いた際、これらの点について主幹事からはかなり強くで言われた記憶があります。(協議というより、いわゆる「指導」というイメージ)




優先株式比率やVC比率を大きくしすぎないようにすべきという主張の最大の根拠は、先ほども触れた、株式公開後の売却圧力になり、安定的な株価の形成に影響を与えると考えられるためでしょう。しかし、株価が安定的に拡大するかは、当然発行会社の業績や市況等の総合的な影響を受けます。本当にストックオプションの量やVCの比率は、その後の株価に影響を与えているのでしょうか。

 

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上記は、SOを発行している企業のSO比率とVC比率を合算した値を、「売却圧力比率」として横軸にとり、前述のSO発行企業の初値時価総額と6ヶ月後の時価総額を比較した場合の騰落率(変化なし=0)を縦軸にとって、両社の相関関係を検討したグラフです。これを見ると、決定係数R2乗値は0.1以下であり、ほとんど相関はありません。

 

また、SO比率、VC比率をそれぞれ個別にみたグラフは以下の通りです。

 

so3

 

やはり時価総額の成長との相関関係はほとんどないことが見て取れます。もちろん、サンプル数がが十分ではないため、この分析を持ってSO比率は10%より高くても良いとか、VC比率は気にしなくても良い、と主張することは間違いですが、少なくとも株価が下がるから10%以上のSOはダメ、といった杓子定規な主張も、合理的根拠があるかどうかは慎重に確認する必要がありそうです。


 

※注)ここではグラフ化していませんが、手元の計算ではストックオプションやVCの出資を全く受けてない企業群は、どちらかを行っている企業群に比べて時価総額の上昇率が高い傾向が出ています。従って、「VC出資やSO発行をしても、全く株価に影響がない」ということではありませんので、念のため)。


 

ビジネスモデルや成長ステージによっては、VCの支援がより必要な場合が当然あります。また、従業員のみならずパートの社員等にもSOを発行することを検討する場合、10%を超えることもやむを得ない状況も多々あると思われます。これらの水準については、10%ありき、といった議論ではなく、発行の趣旨と目的をしっかりと主幹事証券に説明し、会社の成長に大きく寄与するものであることを理解してもらう必要があります。一方で、創業初期に明確な意図もなく、とりあえず発行したしたストックオプション等が多い場合は、それが本当に成長に資するものなのか、事業の総合的発展を鑑みて検討する余地があるかも知れません。