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株式時価総額とは

若手起業家の方と資本政策や調達戦略の話をするとき、(特に20代の方や学生等の若手)既に何度も話をしているにも関わらず、なぜか微妙に話が食い違うというか、会話がかみ合わないことがあります。結構丁寧に説明してるつもりなのに、ちゃんと伝わってないことが判ると、自分の「伝える力」のなさに少々がっくりくることもあります。

 

が、しーかし、最近やっと気づきました!彼我の間でどこがずれてるのかを!!

ざわわーーーと霧が晴れてくるようなこの爽快感!自分がいつもやってる仕事の延長で、当たり前に思ってしまってることが相手にとって当たり前ではないのだということを改めて反省します。

 

話がかみ合わない場合、彼ら、彼女らは ほぼ100%

 

「株式時価総額」=「一株当たり株価」×「発行済株式総数」 

 

という式で株式時価総額(会社の価値)を捉えています。しかし、これ、誤解を恐れずに言い切ればファイナンス理論的にはほぼ「間違い」です。(あえて厳密には市場株価法、という評価手法としては例外的な手法)

 

確かに、上場企業の株式は、市場で流通しており日々一株当たり株式の価格が取引価格として決定されるため、株式時価総額=一株当たり株価×発行済株式総数と理解しがちです。しかし、株式取引をする人ならだれでも分かるように、一株当たり株価だけみても、その会社の株価が高いか安いかは分からないですよね。

 

例えば、

 

富士重工の株価:4,220円

日産自動車の株価:1,073円

(2016年2月5日終値)

 

では、富士重工という会社は、日産自動車よりも価値が4倍以上もあるのでしょうか。もちろん違います。

 

富士重工の時価総額は約3.3兆円

日産自動車の時価総額は約4.9兆円

 

富士重工よりも日産の方が会社全体の価値(株主価値又は株式時価総額)は、1兆円以上大きいのです。発行済株式総数というのは、各社の財務戦略や過去の資本政策の経緯で当然各社それぞれであって、会社全体の価値には本質的には何にも関係ありません。(元スバリストとしては、富士重工の時価総額は必ずいつか日産を超えると信じとりますが)

 

では、どう考えるべきでしょうか。

 

教科書的正解バージョン:株式時価総額=株主価値=事業価値ー債権者価値ー少数持分価値

でも、これってわかりにくい。。。ベンチャー経営者はそんなこといちいちちゃんと勉強する暇はない。

 

それならとりあえずこう考えるのが正解です。

 

株式時価総額=株主価値=当期純利益×PER(株価収益率)

株価収益率は、会社の株主価値が当期純利益の何倍あるかを示す指標で、業界や収益構造により市場で観測される平均的な値です。例えば、東証全体の株価収益率は、現在15倍程度です。
http://www.nikkei.com/markets/kabu/japanidx.aspx

そう、つまり、株式時価総額とは、会社の基本的な実力(例えば当期純利益)と将来性(例えば株価収益率)を元に評価された結果であって、一株当たり株価は、その株式時価総額を発行済株式総数で割った結果にすぎません。

算数的に言い換えるなら、

 

株式時価総額は、一株当たり株価に対して独立変数であり、一株当たり株価は、株式時価総額の従属変数に過ぎない、ということになります。

 

では、これを踏まえて次のようなケース(応用編)1

 

何らかの評価手法(例えばPER倍率法)により時価総額が10億円と評価された会社があるとします。

この会社の発行済普通株式は1万株で、経営株主とエンジェル投資家が保有しています。エンジェルは、出資時点で一株10万円で引き受けたわけです。

ところが、この会社が従業員向けの新株予約権を3,000株発行しようとしたところ、エンジェルから待ったがかかりました。「なぜ?意味わかんない。」と聞いたところ、「ダイリューション(希薄化)するじゃないか」と言います。は?なにそれ? と経営株主は困惑します。

 

しかし、10億円という株式価値が一株株価とは関係がないことを考えれば、将来新株予約権が権利行使されて普通株式が増えることが確実視されるなら、エンジェルの立場で言えば、10億円÷13,000株(普通株1万株、オプション3,000株)=約76,900円とも考えられるわけです。

つまり、エンジェルは、一株につき、23,000円も割高に株式を引き受けてしまったことになりかねないわけです。時価総額10億円というのは、少なくともその会社の実力として、株式が増えようが新株予約権が増えようが、変わりはないわけで、株式数が増える分自分の持分の価値が減ることになります。これがダイリューションです。

なんだ、簡単ジャン。そう、簡単なんです。でも、特に技術LOVE、ファイナンスなんてく●な、起業家のみなさんは、本職でこんなことばかり考えているわけではないので、たまにこういう話を振られるとやっぱり混乱することがままあるのだ、ということに最近私は気づいたのです!

では、応用編で次のケース2

 

この会社は、次のラウンドで、金融系ベンチャーキャピタルからの出資2億円の受け入れを検討しています。すると、ベンチャーキャピタルから、次の増資は「A種優先株式でやりたい」と言われました。また、なんのこっちゃ、となります。

ベンチャーファイナンスで用いられる一般的なA種優先株式は、特に残余財産分配権において普通株式に優先して財産を受ける権利があります。これにより、シードラウンドで1億円をVCシェア10%で調達(つまり時価総額10億円)で調達した投資家が、例えば5億円で会社を売却しようとした場合、投資額の1億円を優先して回収することが可能になります。

 

経営株主は、極めて低い株価で会社に設立出資していることがほとんどなので、5億円で売却しても十分なキャピタルゲインが出ますが、VCは5億円の10%(5千万円)しかもらえないので、5千万円も損することになります。この投資家と経営株主のコンフリクトを克服するための仕組みがA種優先株式であり、昨今のVC投資は7割位A種になってきているようです。

では、仮にVCが会社の時価総額を15億円と見積もり、A種優先株式4,000株を引き受けて増資に応じたい、と申し出てきました。この場合、VCが引き受ける一株当たり価値はいくらでしょうか。(新株予約権3,000株は、エンジェルの反対で中止したとして、考慮の対象外です)

 

一株当たり株価:時価総額15億円/14,000株(普通株1万株+A種4,000株)=107,142円

 

で正解でしょうか。ブブーーー。残念、これも理論的には間違いです。

 

ベンチャーキャピタルに割り当てられるA種優先株は、通常一株当たり1議決権が確保された上で、さらに優先分配や残余財産分配(ひどい契約だと投資額の3倍というようなものもあります)権が付与されます。従って、これは普通株式よりも権利関係が強く、理論的には普通株式より価値が高い株式と考えられるわけです。

 

しかし、普通株式とA種優先株式の価値の差額を理論的・客観的に価値に反映させること(例えばA種株式は、普通株式の5倍の価値があるなど)はなかなかに困難です。またブラックショールズモデル等を用いて算定したとしても、恣意性も入りがちであるため、実務ではほとんどこの差額が認識されることはないと思われます。(税制適格の絡みで鑑定評価を取得する必要がでてくる場合はあります)なので、上記の算定結果も、理論的には間違ってますが、実務上は広く受け入れられていると思われます。

 

しかし、経営株主は、A種優先株式による出資を受け入れた時点で、普通株式より強い権利を付与した株式を引き受けてもらっており、その対価として資金を調達しているのだ、ということは念頭に置いておくべきだと思われますし、また、A種株式にあまりに強い権利内容が付与されていないかどうかについても、信頼できる弁護士に慎重に確認すべきといえるでしょう。