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起業、投資、ベンチャーファイナンスに関するコラム

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譲渡制限株式とは ~譲渡制限株式は「承認がないと売れない」株式、ではありません~

作成日:2016年10月04日(火)

ほとんどの非公開会社は、定款に株式の譲渡制限を定めています。この株式の譲渡制限制度は、会社にとって望ましくない法人、個人が、ある日突然株主となって会社の経営を不安定化させることを防止するためです。しかし、資本政策の話を経営者の方とお話ししているとき、この「譲渡制限株式」の意味についてちょっと誤解している場合があると感じます。

 

誤解の典型は、「譲渡制限株式は会社の承認がない限り絶対譲渡できない。(だから安心)」という勘違いです。

そもそも株式会社制度は、資本充実の原則に基づき、資本の払い戻しを原則として認めていません。従って、株主は、自己の財産を他者に有償で譲渡することにより換金する手段を法的に与えられています。(株式譲渡自由の原則)これが「原則」です。株式市場に、プライマリー市場(発行市場)とセカンダリー市場(流通市場)があるのはこのためです。

一方で、多くの未上場企業は、冒頭に述べたように、小さな規模で同族的に営まれている企業に、好ましくない外部のものが株主として参画してくることを防止するため、譲渡制限株式制度を活用して株式に譲渡制限をかけています。しかし、「株式譲渡自由の原則」にたいして、これはあくまで「例外」です。

で、なにが言いたいのか。

もし、ベンチャー企業にマイノリティーで出資している株主が、具体的な譲渡相手と譲渡条件(価格、株数)等を明示して会社に対して譲渡承認を請求してきた場合、会社はその譲渡を認めるか、それを認めない場合は、会社でその株式を買い取る、または他の株式買取者を指定しなくてはなりません。端的にいうと、株主に対して「出口」を確保する義務があるわけです。「うちは譲渡制限会社だから譲渡はだめよ。以上、終わり。」ではありません。

具体的な譲渡制限手続きは、法律専門家に確認頂くべき事項ですので、このコラムでは割愛しますが、原則として、譲渡自由なもの(株式)に例外的な制限をかけているだけというが譲渡制限株式ですから、株主が具体的な相手方と条件を指定して、譲渡の承認を会社に請求してきた場合は、株主が自己の財産を換金する権利を会社が阻害することはできないわけです。

で、それはどういうことなのか。

ベンチャー企業において、この譲渡制限株式制度の意味合いを理解していないままどんどん株主が増えてしまうと、共同出資者や少数株主と方向性の違い等が出てきた場合、もめごとになってしまう場合があります。会社の価値がある程度上がっているような場合は、買取請求があった株式を会社で買い取るにしても、指定買受人を探すにしても、結構大変です。(譲渡請求を不承認とした場合は、譲渡不承認の通知から40日以内に、会社が買い取るか他の買受人を指定する必要があります)

資本政策を立案する際に、特に初期の株主構成をどのようにするか、こうしたことを踏まえてよくよく考慮しておく必要があります。洗練された形としては、創業株主間契約書などを締結するなどの方法がありますが、なかなか創業当初にこういう話をするのもやりづらいものです。

結論:

・創業初期の株主構成検討は慎重に(当たり前か)

・少数株主ともきちんとコミュニケーションをとって良好な関係を維持する(これ、重要)

※少数株主なんてしょせん議決権も少ないし、適当にあしらっとけばええやん⇒×

ちなみに、投資家(VC)等から出資を受ける場合、株主間契約書を締結することが一般的ですが、株主間契約におけるもっとも重要な決め事は、この譲渡制限株式を譲渡する場合どのような条件と手続きを課すか、という点です。ドラッグアロングとか、タグアロングとか、経営者にとっては複雑で分かりにくい概念に感じる人も多いようですが、譲渡制限株式の譲渡に関する基本的な法的枠組みを、より具体的に取り決めるものだと捉えると、少しわかりやすくなるかも知れません。






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