テクノロジーとイノベーションに関するコラム
プロダクトアウトとは?
今回は、前回のコラムでご説明した、マーケティングの9類型のうち、最初の一つ(右下)について、考察してみたいと思います。
このタイプは、下記図の横軸の観点ではいずれも個客の欲求や思い、ニーズをくみ取ろうとする姿勢自体がない、そういうことについてやる気がない、というタイプです。
そして、横軸のマーケティングの要素(ターゲットセグメンテーション)においても、これまたやる気がない、というのが左下です。まさに「マーケティング?は?なんのこと?」というタイプ(以前の私)が、一番左下です。ここではこれを「THE プロダクトアウト型」とよんでみることにします。
こんな会社、ありえねー、と思われるかもしれませんが、戦後間もないころの生活必需品メーカーなどはこれに近いかも知れません。客はなにが欲しいか、とか、誰に売るか、とか、そんなことは基本的にあまり考えなくても売れる。従って、経営のボトルネックはただひたすら生産能力である、という時代です。
例えば、松下幸之助氏が唱え、松下を発展させる原動力になった「水道哲学」などは、一見これに近いかも知れません。これをプロダクトアウトの例として説明している記事を、私もなにかで読んだ記憶があります。つまり、誰に売る、とか、そのためにどういうものにするとか、ではなく、広く社会の隅々まで冷蔵庫、洗濯機、クーラーを供給し、社会を豊かにするのが使命である、という経営理念が根底にあります。
しかし、個人的には、この松下氏の水道哲学をプロダクトアウトと捉えるのは全く反対です。常に、自分ならこういうものが欲しいとか、どういうものなら役に立つか、というお客様を理解しようとする姿勢は、松下の創業からのDNAであり、それだからこそ世界の大企業になったのではないかと思います。
もうひとつプロダクトアウト型として近いサービスは、一昔前の士業かも知れません。例えば弁護士などは、20年以上前であれば需要に対して供給が圧倒的に少なく、「顧客を理解しよう」とか「ターゲットをセグメンテーションしよう」とか、そんな、世俗にまみれた知恵にたよらずとも、仕事が途切れることはなかったわけです。
もちろん、特に弁護士は、弁護士法により広告が禁止されていましたし、解禁後も一定の条件が課されています。マーケティングに制約があるわけです。しかし、これだけネットも発達し、士業の方の数も増え、かつ市場が成熟してパイも広がらないとなると、やっぱりマーケティングの巧拙は、士業の方々の業績にも大きく影響せざるを得ない、そういう話を当の士業の方からも最近よく聞きます。
以上、「THE プロダクトアウト形」について、考察してみました。一般的に、プロダクトアウト型、というと、このタイプのマーケティングをイメージすることが多いと思われます。しかし、弊社はこのプロダクトアウト型にも、実はあと2つのタイプがあるのではないかと考えております。
次回以降で、これについて考えてみたいと思います。