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マーケットインを超えて その弐 ~ペルソナ~

 

マーケットインを超えて② 「ペルソナマーケティング」

前回、ユーザーの期待を超え、広く社会にイノベーションを起こそうとする経営者の考え方を、マーケットインの発想を超えた概念として「天才型」と呼称しました。しかし、ユーザー/顧客の期待を超えるものを提供する/それを目指す、というのは、別に天才に限った話ではありません。日常のビジネスシーンで当たり前に散見される話です。

・外食:お客様に驚きと感動の味を!

・法人営業:常に顧客の先をいけ。提案営業しろ!

・消費財:顧客の「あったらいいね」を実現しよう!

・コンシュルジュ:お客様が困っていることの先を提案しましょう!

(ビジネスではなくても、恋愛において彼女/彼氏を驚かせてあげたい、と思うのも一緒ですよね)

こういった「顧客のニーズを超えていけ」というスローガンや経営方針は、いろいろな会社の経営理念や行動規範を見ればあふれていますし、その重要性や、それが成功した時の素晴らしさは、経験のあるビジネスパーソンはだれでも経験的に理解しているといえます。問題は、どうしたら本人も知らないような潜在的欲求を満たす製品・サービスができるのか。特に消費者向けビジネスの開発を考えている会社/ビジネスパーソンは、結局のところ日々それを考え続けているのではないでしょうか。

世界中の人(みんな)が喜び、感動する、しかもそれが、本人すら想像もしてなかったもの・・・そんなものは天才しか生み出せない、というのが前回の結論です。しかし、世界中のみんな、とまではいかずとも、特定のターゲットについてより深く理解することで、本人すら気がつかなかった価値や喜びを提供することは十分可能で、様々な先達がそのノウハウを体系化しようと試みて、そのうちのいくつかは有効な手段として認識されています。

■ペルソナ分析とは

この課題の解決について、体系化を試みたマーケティングの方法論(と弊社は位置付けています)である、ペルソナ分析という手法もその一つです。1999年『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』の中で、アラン・クーパーによりソフトウェアの開発手法としてまとめられた理論ですが、Microsoftのユーザー・リサーチ・マネージャーだったジョン・S.プルーイットによる『ペルソナ戦略マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする』が刊行されたのをきっかけにマーケティング手法として注目が集まり広まりました。

 

ペルソナ挿絵

ペルソナ分析の全体像を簡単に事例で示すと、おおよそ次のような感じです。(あくまでイメージ、雰囲気、ですので、とてもざっくりで大ざっぱな点はあらかじめご理解のほど。詳細な手続きや分析は、この何十倍も緻密にやっていく必要があることはいうまでもありません。念のため。)


 ステップ1:想定ターゲットと想定プロダクト設定

「高所得共働き世帯(世帯年収1,500万円以上)にウケる引越サービスを企画しよう」  


ステップ2:ペルソナ詳細化 (複数候補者へのヒアリングやアンケート調査からペルソナ像を設定)

夫:大手商社の食糧資源開発係長(34歳)。同期トップクラスの昇進スピードで社内からも一目置かれる存在。食料資源開発はポートフォリオリバランスのために最重視されている領域で、それだけに大変忙しく海外出張も当たり前。今後も転勤は海外含め可能性大。年収1,100万円。栃木県出身。大阪在住。慶應義塾大学経済学部出身

妻:四大会計事務所所属公認会計士(28歳)。6年前に夫の会社がメキシコのソース製造会社を100%子会社化した際、財務デューデリジェンスを担当し、その案件で知り合ったのが縁で交際に発展。4年前に結婚。現在2歳の娘あり。1年前から職場復帰。まだ育児に手がかかるため、妻は年中多忙なM&Aチームではなく監査チームへの配属を希望し、現在監査チームの主査。しかし、四半期開示対応や若手会計士の不足でむしろ前より忙しく育児との両立で疲弊している。夫は出張で家を空けがち。育児のあてにはならない。現在は実家に近いため両親に相当なサポートを受けられている。年収780万円。大阪出身。大阪在住。同志社大学法学部出身

 

今回の夫の東京転勤は、夫の将来にとっても非常に重要。自身も娘がもう少し大きくなればM&Aビジネスに復帰したいと考えており、そのためには東京転勤は望むところ。事務所も快諾してくれているが、なにしろ大阪生まれの大阪育ちで東京に土地勘がなく、そこが最大の不安。正直、東京の地理も良くわからないし、なにより引越し準備にかけられる物理的時間が本当に少ない。どうしようか困っている。


 ステップ3:顧客体験シナリオ作成と提供価値の導出(イメージ)

<引越し情報の収集>

まずはネットサイトで情報検索。相見積は一応取るが、「安いところ」ではなく、「なんでもやってくれて」「安心感」のあるサービス会社はどこか知りたかったのにあまりそういう情報がない。

⇒提供すべき価値「安い」サービスではなく「高いけど良いサービス」を訴求

<当日>

梱包から荷解きまでやってくれる一括サービスを頼んだが、主婦のアルバイトらしき梱包サービスの人が雑で困った。荷物を運ぶお兄さんの作業着もちょっと汚れており、思い切って30年ローンで購入した新居で、ちょっと汚いタオルで汗をぬぐわれるのはいまいち。

⇒提供すべき価値:「清潔」「きちんとしている」「全部やってくれる」

家具が当日来るようにいろいろと手配するのも本当に大変で、引越し屋さんと家具屋さんと家電屋さんのプロジェクトを夫婦で(というか妻が)一人でプロジェクトマネジメントした感じ。引越し当日の妻の不機嫌ぶりに狼狽した夫は急遽なんとか都内の高級ホテルをリザーブし、当日はそこで一泊。これは大変効果があったが、エステがなかったため妻の評価は85点。娘は実家に預けてあるが、もし娘も一緒に行動していたらと思うとぞっとする。

⇒提供価値:「すべてお任せ」「かゆいところに手が届く」「あったらさらにうれしい(ホテル宿泊等)」

<引越し後>

・翌日以降は役所への住所変更届やら役場への届出やらで、平日1日休みを取っても結局いろいろ終わらず。一通り全部おわるまで2週間はかかった。信頼できるのであればこれらも任せてしまいたいが、個人情報そのものなのでやはり不安で自分でやるしかない。

⇒提供価値:「引越し後もお任せ」「安心」「信頼」

 


 ステップ4:サービスの企画・開発

 

◆コアとなる提供価値の定義

・「お任せ」「かゆいところに手が届く」「楽ちん」「清潔」 ⇔(犠牲にしても良い価値「安い」)

◆商品コンセプトの詳細化

★サービス内容

梱包から荷解き、明け渡し物件の現状確認立ち合い同行、引越し時の不用品・廃品の廃棄・リサイクル業務の一括請負、再配置、家具家電の手配、ベビーシッター、各種届出書類の手配代行(外部行政書士等と連携してすべての届出書類を代行)すべて込み・・・などなど

★価格戦略(プライス)

全部込みで●●万円

★引越し情報の収集(プロモーション)

テレビCMは一切配信せず、「月刊戦略コンサルティング」「コロンビアビジネスレビュー」に特集記事形式の広告を掲載。サービス案内パンフレットは、ネイルサロン、高級スポーツジム、エステ等働く女性の出没エリアに重点的に配布

★販売チャネル

・ネットサイトからの申込み受付のみ(高所得者層とITリテラシーには高い相関があるため)


 ■ペルソナ分析の留意点(弊社理解)

商品を知ってから購入するまでの一連の流れの中で生じる顧客接点ごとの提供価値を深く洞察することで、顧客自身も想像しなかった新しい価値や驚きを提供し得る製品、サービスを企画、開発し得る可能性がある点で、ペルソナ分析は「きちんと丁寧にやりきれば」非常に有用性の高い分析手法です。

しかし、実用にあたってはいくつか前提があると思いますので、弊社理解としての留意点をいくつかご紹介します。

◆ペルソナ分析の出発点はペルソナ分析では決まらない

ペルソナ分析で注意すべき点の1つは、分析の出発点となるターゲットやセグメント自体はペルソナ分析では決まらないことです。例えば上述の事例では、「世帯収入1,500万円以上の共働き世帯」をターゲットにしていますが、そもそもこの層は全体の3.3%しかいません。引越し回数が全世帯で変わらないとしたら、たった3%を相手にサービスを提供する「ニッチ戦略」で本当に良いのか、市場規模や成長性といった基本項目を検討する必要があります。当たり前なのですが、なぜかたまに抜けることがあります。流行りのフレームワークとか、ソリューション、というだけで無批判に飛びつくと、そういうことが起きるようです。

妄想ペルソナはだめ

ペルソナ分析では、ターゲット顧客のペルソナ像を具体的に設定するために、そのカテゴリーに属する人や団体のサンプル調査をできるだけ多く実施し、それらの総体でありつつ、具体的なペルソナ像を作成し、シナリオを設定していく必要があります。ある対象者から、「●●というオプションがあったらいいのに」、という意見があった場合、その人自身は自分のニーズに自分で気が付いています(ニーズを理解している)。しかし、その「あったらいいね」に気づいていない潜在層に対しては、それは驚きや感動につながるかも知れません。できるだけ多くのサンプルからペルソナ像をつくることで、初めて「ニーズを超えた」(と感じる人が多い)サービスができる可能性が高まります。これに対して、このプロセスを省略して妄想や思い込みでペルソナ像を設定すると、一見もっともらしくても「はずす」危険性が高まります。

(ちなみに、コンサルティング会社がペルソナ分析について顧客候補に提案する場合、実際にリサーチをするわけにはいきません。そこで、提案段階ではどうしても妄想でペルソナイメージ事例を作る必要があります。筆者はコンサル時代、この妄想ペルソナの天才といわれ、あまりのもっともらしさに顧客候補から「もうこれで十分」と言われて失注した苦い経験があります。。。)

◆ペルソナ分析には提供能力(強みや体力)検証の視点はない

例えば上述のような、「高所得世帯向け引越しサービス」を企画した場合、もしかすると高級家具を安全に運ぶ特別な器具や資材、輸送手段等が必要になる可能性があります。また、引越し作業員も熟練である必要があり、人件費も高くなるかも知れません。これらをきちんとシミュレーションするなら当然事業計画(ファイナンシャルプラン)が必要になります。

しかし、これは私の僻目かも知れませんが、マーケティング領域で、特にペルソナ分析などが好きなタイプのビジネスマン/コンサルタントは、いわゆるアイデアマンとか企画マン、等と評されるタイプが多く、少し財務計画を軽視する傾向があるような気がします。

もちろん、「お金がないからできない」なんて言い訳は話にならないわけで、それをどうするか、が問題であることは言うまでもありませんが、大やけどを防ぐためには一歩引いて、財務面からも冷静に考えることが必要です。まあ、これは当たり前ですね。


 

今回は、ターゲットを明確にセグメンテーションした上で、顧客自身よりも顧客を深く理解して、新たな価値を提供するマーケティング手法として、ペルソナ分析について書きました。

次回は、マーケティングに関するコラムの最終回「ビッグデータマーケティング」について書いてみたいと思います。